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京都に引っ越したい、あるいは京都にセカンドハウスを持ちたい、という人が東京に住む私の周りにも増えてきました。決まって何かにこだわりのある人が多く、グルメだったり、アートに造詣が深かったり。

すべてにわたって感度が高そうな人が多い気がします。今回はその理由について考えてみたいと思います。

都市と自然と人間がうまく調和する京都

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<南側>

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<北側>

私は京都に行くと必ずすることがあります。

三条大橋に立って、南北を交互に眺めることです。

南をむけば四条を中心にしたにぎわい、北を向けば鴨川の先に山々がつながる...。人のにぎわいと自然がこんなに身近に両立するまちは少ないのではないでしょうか。

橋から眺める景色がガラッと変わるようでいて、どちらも京都にしかない景色。そこには人間が人間らしくいられるまちのサイズがあるように思います。

私は都会が大好きです。

故郷の徳島から大学に行くために上京した日から、東京の暮らしにどっぷりはまって40年が過ぎました。

見るもの聞くもの珍しく、いろいろなところに出かけて東京を堪能しました。不動産の広告を作っていたこともあり、毎週々々東京圏をくまなく歩いて取材していました。

ところが最近、東京にドキドキしない。ときめかない。

どうしてなのかを考えてしまうことが多くなりました。

たぶん東京では、どのまちも再開発が進み、どこも表情が似ていて、自分がどこにいるかを見失ってしまうからだと思います。

東京の繁華街は地価が上がり過ぎて、個人で新しいことにチャレンジするのは難しいという事情があります。

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いきおい大資本による大規模な再開発が進むことになります。

そこには個人のこだわりといった曖昧なものではなく、きちんとエビデンスが求められる事業計画が必要とされます。

そうして生まれかわったまちは、どこか似てしまうのはいたし方ないのかも知れません。

新宿駅だろうが、東京駅だろうが、渋谷駅だろうが、どこも同じような顔になってしまう気がします。

しかもアベノミクス以後の東京は経済的な効率にフォーカスされ、どんどん高層ビルが建てられました。

空を見上げても、人間が把握できるサイズをはるかに超えた建物が並んでいます。

私が東京に住み慣れたころに西新宿のビルまちを歩いていると、自分がどこにいるのか分からなくなることがありました。

地下を歩いているのか地上を歩いているのか、北に向かっているのか南に向かっているのか。

自分の目線よりかなり上方向に広がってしまったまち並みでは、人間の感覚は麻痺してしまうのかも知れません。

今ではそれが東京のどのまちでも軒並み、同じようになってしまいました。

京都にいると空が広いと感じます。

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四条河原町という京都の真ん中にいても、空はしっかり身近に存在してくれます。

また周りを山に囲まれているので、自分の居る場所の見当が付きやすいのも安心感があります。

さらに碁盤目のように並ぶまち並みは東西南北が分かりやすく、人間の感覚に適したまちだなぁとあらためて思えるのです。

いい喫茶店といい本屋がある

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1年に何回も京都に行くようになって10年以上になりました。

友人の中には私がすでに京都に住んでいると思っている人もいます。

京都に行く予定を立てると、どこに行くのがいいか聞いてくる人も増えました。

人気の神社仏閣やこだわりの料亭や旅館について期待されているのかなと思います。

ところが私の返事は他の人たちにとってピンとこないようなのです。

というのは、私の京都が好きな理由の1番が「いい喫茶店といい本屋があるから」なのです。

東京では家賃が上がり過ぎて、喫茶店も本屋も個人で経営できる事業ではなくなっています。

東京にもかつては個性的な喫茶店がいっぱいありましたが、今ではどのまちに行っても同じメニューと同じ雰囲気のチェーンスタイルの喫茶店が中心になりました。

ところが京都はどのブロックにも必ず個人経営の喫茶店が存在するのです。それは長年地域の人に愛される喫茶店から、若いバリスタが作った新しいcaféまで、実に個性的なのです。

気が付くと京都では一日に3軒も喫茶店を回っていることがあります。

それぞれが個性的なので飽きることがありません。買ってきたばかりの本を開いたり、その店ならではのお菓子を食べたり、そういったことが特別なことではないのも京都ならではだと思います。

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本屋もまるで本のセレクトショップのように品揃えがユニークな書店が点在しています。

目的の本の隣の本が気になって何冊も買ってしまい、宅急便で送ることになったことが何度もあります。

京都は大学や専門学校もたくさんあるので、書店が充実しているのではないでしょうか。加えて店主の好みがはっきり打ち出された本屋がたくさんあるので、本屋巡りも楽しみの1つになるのです。

新しいことを取り入れるのに長けた京都

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東京にときめかなくなった理由の1つに、スモールビジネスに挑戦しづらい環境があるのではないかと思います。

もちろんIT業界やベンチャーのように、インターネット環境さえ整っていれば、今やどこに拠点を置いても経営できる事業もあります。

しかし個人が自分のこだわりを貫くような店舗やサービスの提供といったスモールビジネスは、人が集まる場所でないと難しいでしょう。

それにつれて個性的な店を見つけて楽しむことがなくなってきました。

たとえば京都なら、週に金土日の3日間しか営業しないベーカリー、週に1日しか開けない骨董店、等々、経営効率から考えたら難しそうなお店が存在しています。

元々京都はスモールビジネスのメッカですし、今もどんどん新しい店舗が誕生しています。

こういったスモールビジネスが次々に出てきて、まちに溶け込んでいくことが、そのまちの魅力になっていくのではないでしょうか。それが京都に来る理由にもなっている気がするのです。

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歴史のあるまちでありながら、コーヒーの消費が全国1位、パンの消費も全国3位(※)というのも驚きです。

それだけ喫茶店をはじめとしたスモールビジネスが活気のある証拠のような気がします。

また新しいモノやコトを取り入れてきた歴史でもあると思うのです。

※家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額及び購入数量(二人以上の世帯)のデータ,2018年~2020年平均の品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキングを集計。

以前、友人と訪れたワインバーで美味しいパンが出されて驚きました。

近所に新しくできたばかりのベーカリーがあるそう。

女性1人でオープンしたその店を近所の飲食店がサポートしていたのです。

なんと「食事に合うパンなら、こうしたほうがいい」とか、「うちの店に置くなら、味はもう少しこうしたほうがいい」とか、みんなでそのお店を育てているようでした。

こういった新しく生まれたスモールビジネスを、周辺の人が集まって応援をする、そんなシステムが京都にはあるのだと感心しました。

「最近はどのパンも美味しくなって、他の人にもすすめられるパン屋さんになってくれたのよ」というワインバーの店主の話に、胸が熱くなりました。

京都を観光で訪れるだけではなく、いずれ暮らしてみたいと思う人は、京都のそんな面が気になるのではないでしょうか。

効率や利便性だけにフォーカスする毎日ではなく、人間らしい実感を持てる場所。そして古い伝統も大切にしながら、新しい挑戦も応援しているまちだから、京都から目が離せないのではないでしょうか。


※画像は素材写真や編集部で撮影したイメージです

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