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ふだん不動産メキキストとして、不動産購入のアドバイスをしています。

東京在住ですが、いずれ京都に住みたいと思い、1年に何回も京都に通い続ける“これから京都ラバー”の1人です。

6回のシリーズで京都と不動産にまつわる話をしていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

まず1回目は、京都の町家の間取りから見る京都での大人の付き合い方について考察したいと思います。

何度も訪れたくなる魅力があるまち京都

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私自身は東京都内のマンションに住み、便利でプライバシーが守られた生活をしています。

窓を閉めていると雨が降っていることさえ気づかない。

出かけようとしてマンションのエントランスに行って、傘を取りに行くというのは日常茶飯事。

それが快適だと思って暮らしてきましたが、だんだん物足りないと感じるようになりました。

同じマンションの同じフロアの人とは挨拶ぐらいは交わしますが、どんな人が住んでいるかさえ知りません。

ここ10年以上、年に何回も京都に来ています。

不動産を専門にしているために、同じエリアではなく、京都のさまざまな場所に滞在するようにしています。

北野天満宮に近い町家を利用した小さな宿から、河原町に近い一棟丸ごと借りられる古民家、二条城近くのイベントスペースを併設した古民家、駅近くの近代的なホテル、部屋ごとにデザイナーが違うホテル、中にはワンルームマンションをリフォームしたホテルと、毎回そのバリエーションを変えて滞在しています。

中でも、やはり京都の人たちの暮らしが身近に感じられる京都ならではの町家に滞在するのが一番気に入っています。

どちらもオーナーの想いが色濃く表れているのが特徴で、「京都滞在の愉しみ」を満喫できるように考えたリノベーションがされています。

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そして東京のマンションでは味わえない満足感があります。

たとえば朝、道を掃除する近所の人たちの声。

学校に行くために歩く小学生の声。

そんなものが遠くから聞こえてきて目覚める。

アラームではなくまちの人の気配から朝を感じることができるのが、実は心地よかったりします。

京町家が物語る京都人のコミュニケーション

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京都が好きだと言うと、なかには「京都の人って、付き合い方が難しいでしょ?」とか「ぶぶ漬け出しますかと言われたら帰れと言うことでしょ?」とか、都市伝説のような話を持ち出す人がいます。

それは京都がずっと前から他所から来た人を受け入れてきた歴史があり、しっかりプライベートとパブリックを分けることのできる、大人のつき合い方ができるまちだからだと思っています。

町家の間取りが実はそれをよく表しています。

一般的に商家が多く、職住が一緒になった併用住宅になっているので、玄関から続く通り庭に入ってすぐの場所は、店の一部や応接の場として使われる店(見せ)の間となっています。

そして通り庭の奥には、台所と一体となった空間があり、家族や親せき、そしてその家にごく近しい人だけが立ち入る奥の間として分けられています。

店を経営していなくても、奥行きの長い京町家にとって、特徴的な間取りになっています。

それが私には居心地の良さに通じると感じています。

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たとえば特別広くない普通サイズのマンションの間取りは、来客があったらリビングに通すしかありません。

つまりいきなりプライベートゾーンに迎え入れることになります。

町家の場合は店の間だけ整えておけば、気軽に家に立ち寄ってもらえます。

最近ではマンションでも玄関部分を少し広くして土間を作るリノベーションが増えています。

自転車置き場だったり、玄関収納に活用されていたり、という場合も多いですが、椅子や小さなテーブルを置いて、来客を受け入れるスペースにしている例も多く見受けられます。

フリーランスの人にとっては簡単な打ち合わせスペースにもなります。

そんな例を見るたびに、町家の間取りというのは実によく考えられていると感じます。

いきなり生活をさらけ出すのではなく、ちょうどいい関係を保つために「店の間」という空間を用意している。

お互いに負担にならない距離感が心地いい関係を生み出す。通りを中心に一緒に暮らしていくチームとして、長くいい関係を続けていくための工夫のような気がしています。

京都ならではのご近所づきあい

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少し前に京都の地蔵盆で当日に会場となった町家に宿泊させてもらったことがありました。

町内の人が集まって、直径2~3メートルの大きな数珠を囲んで座り,僧侶の読経にあわせて順々に回す「数珠まわし」というものがあることを知りました。

子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、いろいろな世代が集まって、遊んだりおしゃべりをしたり。

うまくコミュニティを醸成していると感じました。

それが近所づきあいのいいきっかけになっているのではないでしょうか。

もし新しく入居してきた人がいたら、ここで旧住民と交流できることになります。

実際、宿泊施設を運営するオーナーは東京から京都に移り住み、5年に満たない人ですが、しっかりその地に根差した生活をしています。

東京でマンション暮らしをしている私としては、うらやましい気がしました。

マンションの管理組合の運営というのは、なかなか一筋縄ではいかないものです。

私自身マンション管理士という資格を持ち、以前の団地の建替えも経験、理事会の一員にもなりましたが、住民全員が同じように関心を持って取り組むということはほとんどありません。

誰かがやってくれるという他人事のように思っている人が大半です。

小さな通りに面した細長い家が向かい合うのは、俯瞰で見ると廊下を中心に向かい合うマンションという集合体に似ています。

しかしそのコミュニティの在り方はかなり違って見えます。それは店の間があるかどうかではないかと思っています。

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京町家の店の間は格子や障子、すりガラスの窓から光が漏れ、通りを歩く人が人の住む気配感じることができます。

分厚いドアで区切られたマンションでは、ドアの中に住んでいる人は廊下を歩く人に関心はありません。

廊下を歩く人も目的地に向かって歩くだけです。

お互いに気配を感じることができれば、同じ屋根の下で暮らしているという共感が持てるのではないかと思います。

通りという外と全く個人的な奥の間という内を、うまく結びつける「店の間」の存在が、PP分離(住宅内でパブリックな空間と、プライベートな空間を分離して配置すること)を成立させる工夫になっているのではないでしょうか。

もっと田舎のまちなら、縁側や庭からいきなり訪れるという付き合い方になりそうですが、京都では、それが一旦「間」を置くことができるようになっています。

お互いのプライバシーは尊重にしながら、同じまちで生きる運命共同体としての義務は果たすという、大人の感覚があると感じます。

集まって住むことに長けた都会人のつきあい方を京都の町家暮らしに学ぶ気がしています。

私が京都に通い始めた理由もそこにあるような気がしています。

コンクリートに囲まれたマンションの暮らしでは得られない、雨の音や川の流れといった自然の息遣いを感じながら、ちょうどよい距離感で迎えてくれる都会の顔も持っているのが「京都」なのかも知れません。

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