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みなさんは、京都市左京区の北東部、比叡山の麓に広がる「一乗寺(いちじょうじ)」というエリアについてどんなイメージが浮かびますか。ラーメン街?それとも閑静な住宅街でしょうか。

実は、個性的なカフェ・雑貨店、恵文社のような有名な書店も集まる「京都のカルチャーの新ゾーン」でもあり、古都の趣と現代的な文化が融合している、不思議な魅力に溢れる街でもあるのをご存じでしたか?

そんな一乗寺エリアの魅力や日々の暮らしについて、一乗寺の閑静な一角に佇む複合施設、「koen(コウエン)」さんにお話を伺いました。

参加者

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日髙 美月(ひだか みづき)さん ※写真右

左京区一乗寺にあるカフェ・ショップ・ギャラリー・アトリエの4つの機能を併せ持つオルタナティブスペース「koen(コウエン)」の店長。一乗寺に住んでいる。

深川 陽平(ふかがわ ようへい) ※写真中央

八清・暮らし企画部のプロデューサー。一乗寺のとある物件を担当したことをきっかけに一乗寺の魅力を知る。京都のエリアの魅力を深堀中。

原 蕗生(はら ふき) ※写真左

八清・メディアデザイン部のWEBデザイナー。大学4年間を北白川・一乗寺エリアで過ごす。左京区は思い入れが深い、馴染の地。

人がそれぞれに持つ、サードプレイス

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深川:「公園」と「koen(コウエン)」の関係性を教えてください。

日髙:オーナーの中にも昔から「公園」っていうキーワードが自分の中にあったみたいで。

人それぞれのサードプレイスって、様々な場所があると思いますけど、カフェであったりとか、それこそ目の前の公園であったりとか。

公園のように公共性があって、"自分の居場所"だと思っていただける空間にしたいです。

目的がなくても、ただ窓から見える公園の景色を眺めるだけでも良いですし、koenはそれぞれが自由に過ごせる場所です。

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深川:確かに、ここはふらりと立ち寄れる雰囲気がいいですよね。

日髙:そう思っていただけると嬉しいです。

カフェでお茶をしたり、居合わせた誰かとお話をしたり、ギャラリーやショップでお気に入りのものを見つけていただいたりなど、人やものとの縁が生まれる場所となればいいなと思っています。

誰かにとってのサードプレイスをつくる

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深川:内装はリノベーションをされたんですよね。

日髙:そうですね、けど残している部分も結構あって、窓の位置も変えていないし、天井もそのままです。

ショップの方はそんなに触ってなくて、階段はみんなでシートを剥がして、壁を剥き出しの素材にしました。

カフェは居心地よく過ごしていただけるように、壁を左官で仕上げるなど自然の風合いを持たせています。

ギャラリーは作品としっかり向き合えるように、ホワイトキューブに仕上げました。

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※取材の日はYUKI FUJISAWAさんの展示が開催中。〈展示期間は2025/10/10(金)〜26(日)〉

深川:弊社も京町家をリノベーションして販売しているのですが、元々あるものに付加価値をつけて提供するという考え方が、この空間にもすごく感じられて、八清との親和性もあるなと思いました。

今後、このお店がこんな姿になっていったらいいなといった、展望はありますか?

日髙:新しく来た方や何回も来てくださっている方にとって、新鮮味があるような展示をするなど、何かしらの変化はつけていきたいと思っています。

日頃来てくださっている方がやっぱり落ち着けるような場所でありたいと思っていますね。

今後新しくできる場所であったり、近くにある芸大の学生さんたちとも連携して催しをしたり、はしごしてもらえるような仕組みを作ったり、イベントをしたり、面白いことをやってみたいです。

深川:恵文社一乗寺店の近くにクリエイティブなことをしている人たちが集まる複合施設ができるっていうお話をこの前少し聞きましが、そういった面白い人たちが集まると楽しいですね。

日髙:そうなんです!少し歩けば、新しいお店ができていたり、SNSを見てても、「このお店近くやん」みたいなとこもよくあります。

年々いろんなお店や施設が増えているんじゃないでしょうか。

やはりこの辺りは個人で運営されているお店が多くて、店主の方が大切にされている世界観がしっかりと感じられる場所に、私自身とても惹かれます。

そういう小さいけれど特徴的な、京都にしかないようなお店が結構多いなって思っていて、それは京都の都心部にはない魅力だと思います。

だからこのお店を作っていたときも、ここはたぶんただのカフェではないなと、近所の方たちも見てくれていて、オープンしてすぐに来てくださった方もいました。

一乗寺に住む人の温かさに触れる

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深川:koenを訪れるお客さんはどんな方が多いですか?

日髙:客層は本当に様々ですが、クリエイティブ系の20代後半とか30代前半の人たちが多めではありますね。

常連の方や気に入って来てくださる方は割ともう少し年齢は上の層かなと感じていて、40代、50代の方もいらっしゃいます。

深川:この辺りはご年配の方が経営されているお店も割とあって、けれど中に入ったら若い人がいっぱいいるということも多くあります。

いろんな年齢層の方がこの周辺にはお住まいですよね。

お店には近隣の方が多くいらっしゃるのでしょうか?

日髙:日常的にご来店くださる方はご近所の場合が多いですが、展示を目掛けてお越しになる方は、京都市内だけでなくかなり遠方の方もいらっしゃいます。

大阪や名古屋から京都に来られた際に、何度かkoenへお立ち寄りいただいた方もいらっしゃったり...

本当に嬉しく思っています。

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日髙:ひと休みできる場所でもあるし、さっきおっしゃっていただいたように、お茶をしに来て思いがけない出会いがあったり、人もモノも、何かしらの発見があったり。

その人にとっての新しい出会いがあるっていうのはうちの特徴でもあって、また来たいって思ってもらえるような要素なのかなって思います。

深川:囲むような形状のテーブルも新しい出会いへと導いてくれそうな造りになっていますが、これは造作ですよね。

日髙:そうです、これは「縁が交わる場所」というコンセプトが元々あったので、コンセプトに沿って、丸い形を三つ重ねたデザインにしてくれているんですよ。

深川:おひとりで来てもお客様同士の距離が遠いようで近いような感じだから、話しやすいかなと思います。

出会いが生まれるきっかけになりそうですね。

日髙:たまたま居合わせた人たちが会話が弾んで、今度ランチ行きましょうっていうのもありえます。

それを私は見てるんですけど、交じることもあるし、いいなと思いながら見ています。

その光景はすごい幸せですね。

住む環境としての一乗寺

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原:私は若い方をよく見かける印象があるのですが、若い夫婦やファミリーが住むのに良い環境だと感じられますか?

日髙:大きい公園がいたるところにあってファミリーには良い環境だと思いますね。

小さい子がよく遊んでいる印象もあるし、個人でされているお店がよくあるというのも相まって、街全体がすごく温かいなって思います。

昔からの風情が残っている街でありながら、新しい要素が年々増えていっているようにも感じます。

けどそれが嫌じゃないというか、嫌な新しさじゃなくて、うまく溶け込んでいるような印象を持っています。

古いものと新しいものがうまく共存しているからこそ、昔から住んでいるおじいちゃんおばあちゃんも住み続けられるし、新しくこの辺に住みたいって思う若い人がいたり、学生が住む街でもありますしね。

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深川:過ごしやすい環境なんだろうなって良くわかります。

表現が難しいですが、まさに住んでみないとわからない良さがありますよね。

お店も「行くぞ」と意気込む感じじゃなく、ふらっと行けるナチュラルさがあるような。

日髙:この辺は結構ローカルなスーパーもあるので、お手頃に買い物ができますし、アクセス面も叡電で出町柳まで行けて便利です。

バスも大通りに出れば多く走っていますし、あとは自転車があればどこでも回りやすいですね。

深川:やっぱりこのエリアだと自転車で来られる方は多いですか?

日髙:多いですね。

車も駐車場代がそんなに高くないので、車を持たれている方も多いと思います。

一乗寺ならではの魅力

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深川:原さんは大学時代、この辺りで過ごされたんですよね。

原:はい、大学がすぐ近くだったので、友達とラーメンを食べたり、お茶をしたり、課題の合間に息抜きで散歩をしたりしていました。懐かしい思い出のお店もたくさんあります。

深川:このエリアのどんなところが好きですか?

原:良い意味で京都らしさが"まろやか"というか、肩の力を抜いて、安らげる雰囲気がとても好きです。

目に入ったお店にふらっと立ち寄ってみたり、そこで店主の方やお客さんと気軽にお話したり、ほっと一息つけるような温かさがありますね。

街全体が包み込んでくれるみたいな、圧倒的なホーム感があります。

古いものを残す力も新しいものを受け入れる力も両方があるし、新しいものを受け入れる土壌があるのは、一乗寺ならではの面白さだと思います。

日髙:確かにそうですね。京都の古き良き伝統が残っている場所も大好きなエリアなんですけど、一乗寺は学生さんが多くて、面白いことをしている若い人たちがすごく多いと思います。

京都の他のエリアと比べて新しいものや文化を受け入れる要素が少し強い気が個人的にはしています。

芸大や工繊大、京大もあって、そういうのを面白がれる土壌があるんじゃないかと思います。

学生の街っていろんな人が行き交うから、いろんなこと受け入れるウェルカムな雰囲気はありますよね。

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深川:ここでしかできないみたいな楽しみが実際に暮らすことによって生まれますよね。

掘れば掘るほど面白いというか、地元の人しか知らない、住んでないとわからないようないい場所がすごくあるなと思います。

原:大学は全国から学生が集まっていて、他府県から来た友人もたくさんいましたが、みんなこのエリアのこと、すぐに気に入って好きになっちゃうんですよね。

私もまた住みたくなってきました(笑)

深川:一度住んじゃうと出たくなくなるかもしれないですね(笑)

自転車でパッと出ると鴨川があるし、街中も自転車やバスで数分あれば行けちゃうし、落ち着く場所もあるし。

日髙:私も一乗寺に住んでいますけど、羽を伸ばしやすいというか。

物理的にも精神的にも伸ばしやすいし、山が近くて、自然の景色が近いのもすごく良いです。

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古いものもあって、新しいものも好き。

かつ個性的で面白い。

様々なものを受け入れる土壌。

ある意味本当の京都らしさ。

それが一乗寺の魅力なのかもしれません。

新たな住まいの候補に、一乗寺を入れてみてはいかがでしょうか。

今回取材にご協力いただいたのは

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koen(コウエン)

カフェ・ショップ・ギャラリー・アトリエの4つの機能を併せ持つオルタナティブスペースとして、京都市左京区一乗寺に2024年11月にオープン。アーティスト・写真家として、分野を越境し国内外を問わず活動する、嶌村 吉祥丸氏がディレクションを手掛ける。

所在地:京都府京都市左京区一乗寺塚本町15−2

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