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こんにちは、プロパティマネジメント部の鴻巣です。

今回は「観る文化財から利用する文化財へ」をたくさん実現しているVMG さんの一棟スイートを体験するため、家族で兵庫県朝来市へ行ってきました。

話題になっていて行きたいな~と思いつつ行けていなかったので、閑散期ではありましたがちょうどよい機会になりました。

結果大満足の滞在になりましたのでレポートします。

竹田城 城下町ホテルEN

朝来市と言えば、雲海に浮かぶ姿が幻想的な、日本のマチュピチュ・竹田城跡!

その城跡の麓、竹田城を背負うような位置にあるのが「竹田城 城下町ホテルEN」です。

元は約400年の歴史をもつ旧木村酒造場という酒造場で、建物は明治35年ごろのものだそう。

1979年に閉業し、朝来市が建物を受け継いだのち、公設民営方式で2013年に宿泊・飲食・ブライダルや地域にも開かれた複合商業施設として生まれ変わり、その運営をVMG(バリューマネジメント株式会社)さんが担っているという施設です。

元貯蔵所は竹田城・城下町についての情報館/観光案内所に、元発酵蔵は解放感あるレストラン・カフェに、元店舗兼主屋は、フロント+宿泊4部屋になっています。

それから周りの門や塀なども含むこれらの建物群が、外観・意匠・様式・構造をできるだけそのままで改修されたのち、地域の歴史文化を伝える貴重な存在として評価され2015年に国の登録有形文化財の指定をうけたそうです。

改修後の指定なんですね!

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登録有形文化財に指定されている元酒造所建物(フロント・宿泊棟)

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元発酵蔵のレストラン&ラウンジ棟。かっこいいです

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右手がレストラン棟、左が元貯蔵庫の竹田城情報館。後ろで光っているのが竹田城跡です。

ライトアップがうまくうつっていませんが、綺麗でした~。

スタッフさんによるとここはVMGさんの宿泊事業開始後はじめて手がけた宿だそうで、公民連携の事業で大変なことも多いながら、この建物周辺の古民家の改修も進め、観光客が増えて町が活性化する中で徐々に地域の方々にも受入れていただけた感覚があるとのことでした。

下手をすれば外部の勝手なエゴになりかねませんが、地域社会に貢献できているのか?という感覚は私にとっても大事にしたいことなので、お話を聞いていてすごくいいなと感じました。

地元の方々にも町並みを残そうという意識があったそうで、それはこの事業の成功、継続につながっている大きなカギだったかもしれません。

それにしても、竹田城の人気に火が付いたのが2012~13年頃だったと思いますが、ちょうどその時に運営開始されたとするとすごいタイミングです。

改修・準備段階では事業として成り立つか、集客が見込めるのか想定が難しい部分も多かっただろうと想像しますが、どんな判断があったのか気になるところです。

フロント・宿泊棟(元店舗兼母屋)

フロント棟は、チェックインのために中に入り目に入った小屋組の感じが壮観でした。迫力・キレイ・艶やかな色気。

照明もおあつらえ向きです。

もちろん京都の大型町家でも準棟纂冪などステキなものは見られるのですが、私はいつも穏やかなむくり屋根から想像できなくて大体びっくりさせられます。

経験値が足りないんだな~と思う一方で、なんだか宇宙をみてるようなイメージだったり、こんな美しい空間を人が作ったのか...という畏怖の念を抱いたりもします。

この奥には、元々お酒を作るのに蒸米を作っていたという場所もそのまま保存されていました。

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フロント棟1

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フロント棟2

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フロント・宿泊棟の奥に保存されている、お酒を造る工程で蒸米を炊いていた場所

宿泊棟 - スイート

さて、その旧木村酒造場の西隣にある建物が今回宿泊する1棟です。

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2階建、母屋に広い寝室が2つの定員6名、離れにお風呂もある257 ㎡!

旧木村酒造場で働いていた方々が元々住んでいたそう。

ここにはTVも時計もありません。

照明も煌々と明るい白色ではなく暖色の照明が設置されています。

1階はこっくり甘くて濃い柱の肌色にじんわり反射して柔らかな雰囲気。

お天気が良くなかったので諦めましたが、スタッフの方には立雲峡から見る竹田城の景色を楽しむにいい場所や時間帯など、朝食の予定と合わせて細やかな案内もいただきました。

ウェルカムスイーツは地元のお店のお豆腐マフィンでした。

本当に充実したアメニティラインナップに配慮の行き届いたベッドメイク、到着時にはトイレの中までしっかり温められおり、物の配置1 つとっても随所に細やかな気配りが感じられました。

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8-1IMG_3505.jpg犬用ケージ

そしてワンちゃんへのサービスも。

1階は自由に上がれるのですが、玄関上がったところにケージが1つあると思っていたら、暖房の効きやすい部屋にももう1つ用意されていました。

その部屋には畳風のやわらかい塩ビ(?)のシートが敷かれ、汚れてもふき取れば問題なし。

1階の部屋の床には滑りにくい加工、犬用のアメニティはペットシーツから消臭スプレー、ウェットティッシュ、3種類のおやつまでこちらも充実の内容でした。

更に母屋と離れの間には犬用の洗い場と、お風呂の中にも犬専用のバスタブもあり、これは愛犬連れにはとっても嬉しい設備です。

⾧期滞在したくなりますね。

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洗い場

夕食・ラウンジ

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夕食は元々発酵蔵として使われていたレストラン棟へ。

こちらも高い天井に立派な梁、大きな窓から景色も楽しめる空間になっています。

地産地消を大事にしたフレンチのコース、これがすべてとってもおいしかったのですが、特に但馬牛!

フィレとロースの食べ比べにしてみたところ、絶品でした。

2階には宿泊者が無料で使えるラウンジがあり、お酒やソフトドリンク、コーヒーなどすべてセルフサービスで利用できます。

奥にはおもちゃ充実のキッズスペースもありました。

ここで食事後もしばらくゆっくりさせていただきました。

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ラウンジ

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夜の時間

余談ですが、個人的にも仕事でも日々色々な建物を見せていただく機会は多いもののなかなか叶わないことがありまして、それが建物の夜の顔をみることなんです。

ナイトミュージアムとか夜の動物園、夜の水族館と同じイメージなんですが、チャンスがないとなかなか見れないので、今回は夜のうちに起きて照明を消したりつけたり、夜明けは障子を通してぼんやり入ってくる外の色がちょっと青みがかってきれいで、障子いいなと浸って楽しんでいました。

年を経た建物がもつ緊張感と包み込む感じが好きで、ここはどんなくらしがあったかなと妄想が膨らみます。

これぞ自己満足ですが、仕事で管理している物件たちの夜の顔も、見てみたいなと思っています。

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1泊2日、バタバタでしたが愛犬も一緒に贅沢な空間をしっかり楽しみ、家族で良い時間を過ごすことができました。

てきぱきされていますが親しみやすく、安心できる対応して下さったスタッフの方々に感謝です。

VMGさんは全国各地で同じように様々な施設の運営を担われていますが、「オーベルジュ豊岡1925」という施設が3月末で地元の事業者さんへ運営をバトンタッチすることになったそうです。

これまでの成功を地元の方々の手でも継続することができれば、また1つ良い事例として広がっていくといいなと感じました。

誰に聞いたか忘れましたが、大体2世代、100年くらい前の建物ってよく見えるものなんだとか。

ということは今なんとも思えない建物も、100年後には令和レトロで文化財になる...?!

初めは文化財の活用利用、というキーワードで興味を持ったのですが、文化財であってもなくても関係なく、同じように物件それぞれの個性をみつけ、次の形に縁をつないでいけるようになりたいなあと改めて思った研修でした。