「古い建物を大切にする方法や活用術を探す」をテーマにし、「自由学園明日館(みょうにちかん)」と「イマーシブ・フォート東京」を視察してきました。
"使い続ける"重要文化財の学校建築
まずは近代建築の三大巨匠の1人、フランク・ロイド・ライトが設計した「自由学園明日館(みょうにちかん)」です。
ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と呼ばれ、日本では帝国ホテル二代目本館を設計した建築家として知られている、"フランク・ロイド・ライド"が手掛けた「自由学園明日館(みょうにちかん)」の喫茶付きガイドツアーに参加してきました。
2021年に築100年となった自由学園明日館は、池袋駅メトロポリタン口から歩いて約5分という好立地でありながら閑静な住宅街にあります。
1997年に重要文化財の指定を受け、結婚式場やコンサート会場などにも利用されており、文化財建築物を利用しながら保存する「動態保存」のモデルケースのひとつとされています。
屋根を低く抑えた建物が地面に水平に伸び広がる設計で、フランク・ロイド・ライトの初期の作風「プレーリースタイル(草原様式)」を代表する建物です。
また、縦長の窓や幾何学的な建具の装飾が特徴的です。
1893年のシカゴ万博で建てられた、平等院鳳凰堂を模した建物からヒントを得たともいわれる校舎は、中央棟の東西にも左右対称に建物が伸びやかに広がります。
教室が6つ、会議室が2つあり、現在は部屋ごとに貸し出しが可能なほか、公開講座に使用されています。
1階ホールの南面には幾何学模様の窓が配され、戦前のガラスも一部に残っています。
現在では、コンサートなど、多様なイベントが催されています。


ホール横の階段を上ると、食堂があります。
喫茶付見学チケット(800円)でコーヒーや紅茶、焼き菓子を楽しめます。
講堂はセミナーや一般的なコンサートに貸し出されるほか、結婚式など多目的に貸し出しているそうです。
巨匠フランク・ロイド・ライトが手がけた、日本に現存する4つの建築物の一つ「自由学園明日館」。
建築の素晴らしさはもちろん、「動態保存(建造物は使っていてこそ維持保存ができる)」という考え方が、京町家の保存・再生を大切にしている弊社の思いに通じており、大変勉強になりました。
自由学園明日館
世界初の完全没入体験のテーマパーク
「イマーシブ・フォート東京」は、2023年3月に終了した商業施設「ヴィーナスフォート」の建物を再活用して作られています。
ヴィーナスフォートの作りこまれたヨーロピアンな街並みは残されたまま、物語に没入体験できるよう再生されています。
"さあ、感動の最前列へ"をコンセプトに、特定の世界や事件にのめり込んでしまうような完全没入体験(イマーシブ)を味わえる同施設は、約30,000㎡の面積を誇る屋内空間に、複数のアトラクションやショップ、飲食店を備えています。
今回は、アトラクションの1つ「体験型演劇 ザ・シャーロック ~ジェームズ・モリアーティの逆襲」を体験してきました。
体験型演劇の名の通り、客席と舞台という区別をなくし、参加者は作品舞台を自由に移動することが可能で、リアルタイムで展開する物語に能動的に参加できます。
120分の第1幕、第2幕の二部構成になっています。
※ネタバレになるような内容や真相の考察については、記載していません。
先に感想だけをお伝えすると、「記憶を消して0(ゼロ)から体験しなおしたい!」と思うほど濃密で刺激的な時間でした。
<STORY>
1894年のロンドン、ベイカーストリート。
ある日、シャーロック・ホームズのオフィスを1人の女性が訪れる。
「数年前から行方不明になっている婚約者を探してください。」
早速、婚約者の捜索に乗り出したホームズとワトソン。
同じ頃、ロンドンの町で"連続猟奇的殺人事件"が発生する。
ロンドン警察のレストレード警部は、シャーロック・ホームズにこの殺人事件の捜査協力を依頼する。
全く繋がりのなかった二つの事件を捜査するホームズだったが、とある真相にたどり着いた時、あの宿敵の影が見えてくる。
やがて、名探偵シャーロック・ホームズに最大の危機が襲いかかる。
2つの事件の裏側に隠された驚愕の真実とは?
様々な登場人物がいるので、参加者の興味を持つ人に付いていくなどでルートが分岐していきます。
シャーロック・ホームズについて回れば「探偵視点」、スコットランド・ヤードのレストレード警部について回れば「警察視点」、平和を守る警官について回れば「警官視点」...といった感じで事件を追っていくことができます。
そして、そこにはそれぞれの物語があります。
自由度が高く、リピートしたくなる工夫が随所に施されていて、何度も参加しても楽しめます。
シャーロック以外にも、魅力的な既存コンテンツがある他、2025年4月にディナーコース料理付き新コンテンツ「真夜中の晩餐会~Secret of Gilbert's Castle(チケット価格24,800円)」もリリースされています。
1990年代の景気拡大期に量産された商業施設は、再開発が難しいエリアにおいては、老朽化やテナントの歯抜け等により、雑居ビル化が進んでいるものが多くあります。
旧商業施設(ヴィーナスフォート)が持っていたハードの魅力を残しつつ、完全没入体験(イマーシブ)という新しいソフトを組み合わせることで誕生した「イマーシブ・フォート東京」は、"IDEAで不動産の可能性を最大化"を試みた事例で、古い建物の活用術として大変参考になりました。
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