469.jpg

前回、京町家作事組とは?というところから、ポリシーについておうかがいしました。

前回の記事

後編では京町家購入のポイントや今後の展望などをうかがいました。

京町家購入のポイントとは

IMG_7904.jpg

ー改修を前提に京町家を購入する場合、アドバイスがあれば教えてください。

井澤井澤

技術的には時間と費用があればどんな京町家であっても、基本的にはすべて改修することができます。
部材の入れ替えが可能というところが京町家の特性でもありますので、直せない町家はないのです。

しかしながら、撤去費にお金がかからないというところはポイントかもしれないですね。
見えない部分にお金をかけることは品質を高めるという意味ではいいことですが、捨てるものにお金をかけるのはもったいないですよね。

荒木荒木

やっぱり改修費のことがあると思います。
僕の考えですけれども、ほぼ触っていない(これまで改修していない)町家がいいのではないかと思います。
改修を重ねて梁や柱、床などをぬいたりしている町家は直せないことはないのですが元に戻そうと思ったらパズルみたいになってかなり手がかかります。
建てられた当時のまま残っていれば仕事がしやすいですね。
あとは雨漏りしていると結構シロアリにやられたりしているので気をつけた方がいいですね。

小林小林

店舗やゲストハウスなどは見た目重視で昔の壁や梁、柱を抜いてしまっているものもあります。
通し柱を抜いてしまうと、胴差しがいっぱいささっているので補強するのが大変ですよ。
間取りがあまり改変されておらず、仕上げもそのまま残っているのが理想ですね。

冨家冨家

看板建築で外をめくってみないとわからん物件もあります。

波多野波多野

それをはじめの段階で見極めるのはプロでもなかなか難しいですよね。

荒木荒木

増築がかなりされていて、屋根の外周に壁があるような物件もありました(笑)
どの柱を抜いても大丈夫かを見極めながら減築の作業をするのは大変でしたね。
昭和初期以前に新築で建てられた当時からずぼらな京町家も正直あります。
いくらまっすぐ直そうとしても1階をまっすぐにしたら2階がいがんでくるというのもありますね。

井澤井澤

ただ、それすらも京町家は許容しているんです。
京町家がなぜいいかというと、柱が1本1本独立していて、あげたり下げたりができるというところにあります。
すなわちボロボロになっても改修が可能であるということです。

暮らしに寄り添う京町家

153.jpg

ー家が長持ちする秘訣はありますか?

荒木荒木

メンテナンスをしてほしい、家を好きになってほしい。
家を好きになれば維持管理しようと思いますよね。
あと、何か問題があれば早めに言ってほしいですね。
ネズミが入っていたら早く言っていただかないと屋根裏がフンだらけになったり手のかかることになってしまいます。

ーお客様とのエピソードで印象に残っていることはありますか?

冨家冨家

自分が住んでた家をリフレッシュするような改修をされたお客さんの顔が印象に残っていますね。
大学卒業後、関東に住んでおられ、ご両親も亡くなり空き家となってしまったご実家を京都へ帰る場所・親戚の集まる場所として綺麗に直したいという思いでご依頼を受けました。
思い出のある部屋や意匠のことなどエピソードを聞きながら改修の打合せをし、工事期間中はまったくのお任せでしたが、改修が終わり、引き渡しの当日に関東から来られ綺麗になった町家をご覧になられた時の、うれしいような満足なような何とも言えない表情で中を回られたことが言葉以上に満足いく仕事させてもらったようでこちらも嬉しかったです。

井澤井澤

もともと隙間などがあってかなり寒かった家が、床暖房とか断熱とかしなくても特別な設備を入れなくても、ゆがみを直して、壁塗り替えて、床張り替えて、隙間なくして、外気が入って来なくなっただけで「こんなにあったかくなるんや!ありがとう」って言われます。

荒木荒木

ご高齢のおじいさんがずっとお住いだった家がボロボロになってきて、もうつぶすしかないと思っておられたようですが、それをしっかり直して蘇らせると、黙ってたたずんで感動されていた姿を見て、とてもうれしかったですね。
どんな町家でも直せるんです。

井澤井澤

もうボロボロであかんと思っていた町家がきれいになったお客さんが「だまされたと思って頼んだけど、こんなにきれいになるとは信じられん」と言われた(笑)のはうれしかったです。

今後の展望

171.jpg

井澤井澤

京町家を残していける改修を続けていって、100年後、改修した京町家をまた改修するときに、100年前にこの京町家を改修したのは誰だとなったとき「京町家作事組や」ってなるような改修をしていきたいです。
また、その技術をもっている人の輪を広げていきたいですね。
個人的には京町家の新築を実現するとか、京町家を増やせる方法を考えていきたい。
科学的裏付けがないと信用にはならないし、今はまだ法律の壁もありますが、新築を建てないといつか京町家はゼロになる日がくるので、未来に残していきたいですね。

冨家冨家

京町家を残していくためには住みやすいものでないといけないし、そういう提案をしないといけないと考えています。
あまり大胆なことをしてしまうと京町家のDNAが分断されてしまうことになるので、京町家作事組がもっているポリシーから外れない程度に住みやすさにも加味した提案をしていきたいと思っています。
例えば、おくどさんがあったら、輻射熱暖房で冬の暮らし方も変わったかもしれませんが、火が入らない状態になってしまうと寒い吹き抜けになってしまう。
意匠を残すと今の暮らしでは無理があったりすることもあるので、使い方などもオーナーさんにお話しして理解を得ないと、本来のスペックを活かせない使い方をされてしまうと、不快な思いをされることになりますので、コミュニケーションは大事だと思います。
そういうのをどんどん発信していきたいと思っています。

小林小林

これからの社会は住むのは新しい家で京町家は別で所有するみたいな感じでもいいんじゃないかと個人的には思っています。
減っていくかもしれないけど残っていくやろうし、200年後に新築として作っている家は京町家かもしれないですよ(笑)
もともと日本人は網代壁や板壁の家に住んでいたと考えているので、土壁は仏教と一緒に外国から来たんじゃないかとも考えられます。
瓦だって平安時代はあんな重いもん乗せてと笑っていたと聞いたこともあります。
だから伝統構法と言っているけれども本当は外来工法なんじゃないでしょうか。
それをすごく良くして、工芸化して、自分たちの生活に取り入れて伝統と言えるほどのものにしてきた。
そうして昇華させていく力が日本人にはあるので、いいところを残していきたいです。
京町家のいいところは四季を愛でる空間、しつらえがあるというところです。
自分も楽しむけれど、お客さんにも四季を感じてもらえるようなもてなしの心が備わっています。
町家にある床の間では御軸や生け花などが楽しめますが、今の家では床の間がなくなってきているし、そういったもてなしの心がなくなってしまっているのがとても残念に思います。
そういう楽しみ方ができる空間は残っていくと思うので、それを啓蒙していく活動を一緒にしていければいいなと思っています。

荒木荒木

現存する京町家は4万軒を切っていて、毎日2~3軒が壊されていると言われています。
そしてこの4月からの旅館業法の改正により簡易宿泊所として利用されていた京町家がさらに減っていく可能性が高まっています。
そうした中で我々がこの活動をしても、年間残せて数十軒ほどなので、大海の一滴でしかない。
我々だけではなく同じように京町家をちゃんと直したいと思っている工務店、職人はたくさんいるはずです。
我々の考え方を理解してもらって、町家をちゃんと直すことができる工務店、職人さんの輪を広げていくことが大事だと思っています。
我々だけでは町家の減少は止まらないので、啓蒙活動をしていくことが求められていると思います。
京町家作事組で工務店は現在7社しかありませんが、ちゃんとやろうという工務店さんを増やしていきたいですね。
京町家を見に来てもらって、ちゃんと良さを伝えていかないいけないと思います。

456.jpg

波多野波多野

それぞれ熱い想いがありますね。
八清ではお願いする職人さんも高齢化していて、頼めるところがなくなってくるという危機感をもっています。
広がらないし、したい人がいてもできないというのはもったいないですよね。

荒木荒木

当社でも職人さんを募集しても40代以降が多く、20代はほぼ来ないのが現状です。
来ても、ノミやカンナを持ってないという人がほとんど。

小林小林

でも、若い人は手仕事をしたがっているんです。
けれど、職人の手間賃が安すぎるというのが1つ理由としてあると思います。
職人さんを大切にする社会に戻していかないといけない気がしています。

井澤井澤

安さには裏があるし、高ければそれなりの品質があるはずなんですが・・・
手間にお金をかけることに抵抗感がある人がいますね。

荒木荒木

手間をアピールしてこなかった我々の責任でもあると思います。
先日ドイツの職人さんが見学に来られたんですが、ドイツでは3年修行すればマイスターとして認められるんです。
現場で着る服もきちっとした制服があってかっこいいんですよ(笑)
向こうは伝統を大切にしているんだと思いましたね。

波多野波多野

昔だったらすべて棟梁に任せてた時代があったと思いますが、今は分業している現場がほとんどですよね。

荒木荒木

昔は設計士さんがいなくてもすべて職人で考えていたんです。
今は"おさまり"描いてって職人が言ってくるので、本当は「全体のバランス見て自分で考えろ」って言わないといけないのですが、図面を描いたりしていますね。

小林小林

棟梁のセンスを活かすところがなくなってきていますね。
家の中にガスとか電気とか情報とか、いろんなものが入ってきて昔の家じゃなくなっているので、大工さんだけではすまなくなっています。
お客さんも情報社会になって、良く知っておられます。
最新のLEDの照明はなんとかで~とか言われたら大工ばっかりやってきた人はついていけてない。
本当は大工さんは板金とか全部をわかってないといけないけど、それ以上に新しいものが入ってきているので分業化しているのではないでしょうか。

荒木荒木

改修でも現場の采配にある程度任せた方がいい家ができると思うんですけどね。
昔は大工さんは地震で家が倒れたら打ち首と言われたので、必死にやっていた時代もありましたが、今は責任が分散されていますよね。
本当は職人とお客さんとが一緒になって作っていたのですが。
そういう意味では、京町家作事組は設計者と工務店が一緒にやるところがいいところなので、楽しくやっていきたいですね。

波多野波多野

京町家作事組さんは京都市における京町家再生のパイオニアであり、八清が本格的に京町家の改修・保存を始めたときのお手本とさせていただいた団体の1つです。
京町家を継承する考え方と、継承するための改修・修繕に関する技術において、学ぶべきことが多く、京町家作事組さんの工事現場や見学会に参加させていただいたり、加盟されている設計士さんに京町家の"いろは"をレクチャーしていただいたりしたこともあります。
今回あらためてお話をうかがい、京町家の魅力や京町家に関わる人たちの想いを発信して少しでも貢献していきたいと思いました。

ー様々な専門家の想いと情熱が「京都のまち並みに京町家を残す」という活動の原動力になっているんだなということを感じました。

情報発信して伝えていくことの大切さを実感し、京町家の魅力にあらためて気づくこともありました。

今回お話をうかがったのは

177_220.jpg

京町家作事組
事務局:京都市中京区三条通新町西入ル釜座町32番地マップ
受付:月~金 10:00~12:00/13:00~16:00
TEL:075-252-0392
※お越しになる場合は、必ず、事前にご連絡ください

詳細はこちら

前編の記事はこちら

fullsizeoutput_220.jpg

京町家作事組とは?というところから、ポリシーについておうかがいしました。

記事はこちら

京町家の物件あります!