京町家再生プロジェクト 大正ロマン壱号

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いざタイル選定へ 其ノ壱 ~日本におけるタイルの歴史~

5月の連休明け、再び大正ロマンの現場が動き出す。この日の打ち合わせは、本プロジェクトの顔である外壁の一部、タイルの選定である。西洋においてタイルの歴史は非常に長く紀元前まで遡る。しかしながら日本において本格的に普及し始めたのは明治以降。当時西洋建築の影響を受けた官公庁舎などはレンガ造りが中心であった。大正期に入り赤レンガが主流だった中、1914年に小口の平タイルが大量に使用され築造された東京駅は大変斬新なものであった。この後1923年に起こる関東大震災により状況は一変する。大地震により多くのレンガ造りの建物が倒壊し、耐震性を求めた鉄筋コンクリートが重宝されるようになる。以降、コンクリートの壁面をレンガ調のタイルで装飾するという手法が採用されるようになり、大規模ビルから小規模建築まで広く使われることとなった。


一般家庭においても内装タイルが広まるようになるのもこの頃だ。明治期から、西洋の影響受けた上流階級の邸宅などでは暖炉廻りや水廻りにタイルが用いられることはあったが、庶民へ広まるきっかけは公衆浴場の内装でタイルが利用されたことに始まる。衛生面に対しての人々の関心が高まったことにより、内外装ともに建築用材として取り入れられることになったのだ。


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ロマン新聞五月二十四日号 写真

さて、沢山並べられたタイルを見比べ悩む面々。タイルと言えどもその種類は様々で、釉薬がかった陶器質や磁器質のものもあれば、うわぐすりをかけない素焼きのレンガのようなもの、現代であればセラミックなど。今回なぜここまでタイルにこだわるのかというと、選ぶタイルによっては、洋風の建売住宅にみられるような新しい雰囲気がでてしまわないか、ということを懸念しているのだ。企画当初より、「既成のスクラッチタイルでは新しさがでてしまう、そうではなく、年月により色や風合いが変わったような、あたかも昔からそこにあったような雰囲気にしたい」とミスターTの意見に皆うなずいていた。


素焼きの古いレンガ調のイメージを基に、以下が候補に挙がったものである。


ロマン新聞五月二十四日号 写真


1は、荒い土の風合いが出た素焼きのレンガのようなタイル。
2は、同じ種類でも焼け方が異なる古びたレンガ風。
3は、滑らかで、少しモスグリーンにも見える上品なレンガ調タイル。


このように少ない枚数で見ているのと、大きな面に貼った時の印象は全くことなる可能性もあり、余計に慎重に決めなければならない。一枚一枚が焼き物のため、色の出方や土が描く模様は一つづつ違う。さらに、並べ方によっても見え方が違うということを考える必要があるのだ。

この日は最終的上の、1と3を現場で並べて雰囲気を合わせてみることになった。
現場合わせの様子は次回報告を待ちたい。


ロマン新聞五月二十四日号 イラスト

素材も大切ですが、並べ方も重要。1列ずつ整列させるのか、半ピッチづつずらしてやるのか・・・。目地の幅や深さも全体の雰囲気をつくる大きな要因になりますよね。

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