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2022年、幸せなことに、私は京都で約1週間ずつ、2回も住むように暮らすことができました。

東本願寺近くの町家で、八清の社長である西村直己氏がプランニングしている新しいプロジェクト、セカンドハウスシェア「Sym Turns(シムターンズ)」のモニターを経験することができたのです。

このシステムはセカンドハウスと共同利用者のマッチングと管理支援を行う目的で開発されたものです。

Airbnbでもなく、シェアハウスでもなく、通常のホテル滞在でもなく、また完全に自邸をかまえて2拠点で暮らすわけでもない、新しいスタイルです。

計2回、それぞれ体験させてもらったメンバーの意見や提案を取り入れて、よりバージョンアップして誕生しました。

完全に2拠点を持つのは難しいけれど、毎回滞在先を考える必要もなく、京都でもう1つの"居場所"を持つことができるという画期的なシステムです。

今回はこのシステム「Sym Turns」について取材させてもらいました。

八清の社長、西村氏が創る"新しいセカンドハウスシェア"とは

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数組で同じ部屋を毎月一定額で借り、各自がWeb上のシステムで予約して利用します。

利用期間や時期などはオーナーの希望によって変えられるので、フレキシブルに利用方法を対応することも魅力です。

例えば現在お試しで運営が始まっているリノベーション京町家の1軒は共同利用者最大6組で、利用料金は各自月額5万円、1度に1週間まで滞在できて滞在人数は最大3人、退去時に予約が入っていなければ延長することも可能です。

現在3棟がお試し運営中で、共同利用者や月額利用料金は物件により異なります。

「Sym Turns」滞在の特徴

  • テレビ、冷蔵庫、電子レンジなどの家電、食器や調理器具も完備
  • シーツやタオルは各自で用意
  • 滞在中の掃除や洗濯は自分で行う
  • 鍵付きの収納を完備し、各自の持ち物を置いておくことが可能
  • 室内の管理は入居者に任され、退去時の清掃や日々のゴミ出しは各自でする

さらに大きなポイントとして、オーナーの場合、自分も利用ができるということです。

他の入居者と同じ条件で参加すれば、必要な時に滞在することも可能です。

ルールの設定はオーナーによるところもありますので、すべて同じ利用ルールということではありません。

この新しいシェアシステム「Sym Turns」は、八清さんの社長、西村直己氏と弁護士である弟さんが知恵と経験をしぼってスタートしました。

借りる側と貸す側の双方にとってもメリットがあります。

ユーザー...借りる側からの視点

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京都に拠点を持ちたいと思いつつ、自分のためだけの住まいを持つことは、かなりハードルが高いでしょう。

まず物件を離れた場所から選ぶのは難しいです。

気に入った物件があったとしても、内見に行くまでのタイミングが困難です。

その点、八清さんのノウハウを活かし、あらかじめ賃貸向けに整えられた物件の中から選ぶので、物件探しが容易です。

また敷金礼金を含め、1軒を自分で借りるためには初期費用がかなりかかります。

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家具や食器、寝具などの備品も自分で備える必要があります。

毎月の家賃、光熱費等もかかるので、その費用も頭に入れておかなければなりません。

また自分がいない間の管理も考えなければなりません。

空き家にしている期間が長いと家が傷むといわれます。

いつも誰かが滞在しているので、家の傷みは進みにくくなります。

また短期滞在としてAirbnbやゲストハウスの利用を考えると、毎回異なった場所を予約しなければなりません。

荷物もかさばりますし、煩雑な要素が多くなります。

オーナー...貸す側からの視点

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私の場合、10年前から京都に物件を持ちたいと考えつつ、実行できなかった理由の1つに維持管理の問題があります。

私が不在の時、どうすればいいのか、管理会社に依頼するのも面倒だし、費用がかかります。

また貸す側として物件をAirbnbやゲストハウスとして活用するには煩雑な仕事が増えます。

専門の会社に代理して運営してもらうのも、手間と費用がかかります。

さらにコロナ禍のようなアクシデントが起こった際には、利用客の急な減少に頭を悩ます可能性があります。

景気や状況に過度に左右されるのは資産運用としては難しいでしょう。

専門に宿泊施設を運用しているプロでも難しい局面を、慣れていない個人がうまく対処できるとは思えません。

しかし完全に賃貸として貸し出してしまえば、自分が利用することができません。

京都に拠点を設けたのはいいけれど、自分が利用できなければ、京都に物件を買ったメリットが味わえません。

なぜ2拠点ではなく1.5拠点なのか

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上記のような理由で、今回の新しいセカンドハウスシェアは借りる側・貸す側にとって双方メリットが大きいのではないでしょうか。

西村氏によると「2拠点ではなく1.5拠点の居住形態がちょうどいい人たちに向けて考えたプロジェクト」だそうです。

それを聞いたときに、思わず膝を打ちました。

私が10年間も考えこんでいたのは2拠点居住の負担の大きさだったと気づいたのです。

私の場合は、単に京都が好きという理由もありますが、京都で古民家の再生をして、自分の趣味でもあるアンティークの家具を置いた空間を作りたいという願望があります。

できれば、その空間を自分だけではなく、他の人にも活用してもらいたい。

しかし運用するには経験がないというハードルがありました。

まだ東京から完全に離れることができません。

けれども年に何回も京都に行っているなら、そこで暮らすように滞在したいと思う気持ちは当然のように感じてきます。

きっと私のような望みを持つ人は多いはず、そんな人にとって借りる側としても、貸す側としても、1.5拠点居住は理想的かもしれません。

ふだんの京都の暮らしを知るいい機会

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今回、お試し居住をしてみて気づいたこともたくさんありました。

京都が好きで何回も足を運ぶようになると、だんだんと観光客の行く場所に足を運ぶのが面倒になってきます。

訪れる場所や店も決まってきて、住んでいるように暮らしてみたいという願望が出てきます。

昨年の2回の滞在は、そんな私の願いにぴったりと合う体験でした。

コロナ禍で飲食店が夜は空いていなかったという理由もありますが、夕食は近くのスーパーマーケットや錦市場で買い物をして、簡単に調理してみたりもできました。

それまでは食材を買ってみたいと思っても、漬物や生麩を買う程度でしたが、しっかり食材を買う体験もできました。

以前も書きましたが、さまざまな種類のだし巻き玉子を試したり、気になっていたベーカリーのパンを朝食にしたり、ふだんの京都暮らしを満喫しました。

また外食に関しては近所に美味しい蕎麦屋がありました。

その店は狭い路地にあり、お昼前になると「出汁」の匂いが漂うので、思わず立ち寄ってしまいます。

有名ではあるけれど近所の人のふだん使いの店でもあることがしっかりわかる蕎麦屋でした。

観光客向けの店舗はしまっていたのですが、地元の人向けの店舗が空いていたのは助かりました。

逆にコロナ禍だから、京都ではふだんの暮らしがしっかりしていると気づかせてくれました。

一緒に借りる者同士の連帯感にも期待

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このモニター制度には10組程度が参加しました。

専用のチャットグループがあり、お互いの自己紹介や滞在してみて気づいたこと、申し送り事項などを書き込むことができました。

懸念事項としては、各自が部屋の清掃をするので、清掃レベルの感覚の違いがあるかもしれません。

また自分が出したゴミを、収集日のスケジュールによって次に滞在する人にお願いする必要もあります。

そういった点をチャットで申し送りができるのは大きなメリットでした。

情報を交換しているうちに、お互いに仲間の感覚が生まれました。

たとえば先ほどの蕎麦屋さん情報は、私の前に滞在した方から教えてもらいました。

行く前から楽しみにしていましたが、実際に行ってみたら、ほんとうに気に入って何度も足を運んでしまいました。

このシステムではチェックアウトとチェックインを正午という同じ時間に設定しています。

西村氏によると「できればお互いが顔を合わせてもらえる機会になればと思っています」とのこと。

もちろんチェックアウトの時間前に出ることも、チェックインを遅くするのも可能です。

ただ期間は別としても同じ空間を共有するものとして、顔見知りになっておきたいという気持ちは自然かもしれません。

バトンを渡すように暮らすことで、お互いへの思いやりやいい意味での適度な緊張感は、この新システムを運営していくのに大事な要素かもしれません。

「いずれ、このシステムがうまく運用していくようになれば、メンバーが集まるオフ会を開いてみたい」とのこと。

西村氏は、いずれ京都だけではなく全国各地でこのシステムが運用されるようになれば、日本の住まいのカタチも変わってくるのではと期待しているそうです。

日本全国で空き家問題が取りざたされている今、不動産活用のスタイルも変化が必要かもしれません。

2拠点とまではいかずとも1.5拠点居住なら、さまざまな人に可能性が広がるような気がします。

Sym Turns(シムターンズ)

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