皆さまこんにちは。西村孝平です。

繊維業からスタートした八清は、昨年、創業60周年を迎えました。

私は先代より引き継ぎ2002年に代表取締役に就任した二代目です。

近頃は本業とともに、官民さまざまな団体に参画し、仕組みづくりや働き掛けを行っています。

趣味は月に100キロ走るジョギング。

旅先にはジョギングシューズを持参して、早朝に町並みを観察しながら走ることが楽しみであります。

各地のマラソン大会にも年に数回参加しています。

 

現在私は、京都市の空き家相談員としても活動しています。

今回は、京都だけでなく全国で問題となっている空き家問題について考えを述べたいと思います。

820万戸も空き家!!

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最近、急に空き家の事が新聞紙上に取り上げられる事が多くなりました。

今、全国で820万戸も空き家があるそうです。平成25年の統計では全体の13.5%が空き家で、空き家のうち318万戸(38.8%)が「その他空き家」と呼ばれている「ほったらかし」の住宅です。

何故「ほったらかし」になるのでしょうか?

一つには使い道がない、また使い道があるが資金が用立てできないという問題があります。

地方から都会に出てきた人たちは田舎に帰る事ができない、または帰れない事情があります。

もう一つ大きな原因が税金です。

固定資産税は居住用建物については特例減税があります。

本来の土地評価が建物付の住宅地だと6分の1課税に減額できるのです。

たとえば、両親が住んでいる建物は居住用ですから、使わなくなっても同じ減額の課税になります。

そのため、老朽化して危険家屋になっても簡単には解体されなくなります。

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一番大きな原因は少子高齢化です。

私ももう66才の前期高齢者です。

団塊の世代ではありませんがアラウンド団塊世代です。

2008年が日本のピーク人口で1億2808万人です。

国の将来推計人口データ(平成29年推計)によると2040年1億1,092万人になり、2065年には8,808万人になるのだそうです。

住宅は余って当たり前です。

NRI引用データ.png出典:株式会社野村総合研究所(2017年6月20日ニュースリリース)

上のグラフは野村総研が今年の6月にリリースしたニュースから引用したデータです。
2033年には住宅総戸数7126万戸の内2166万戸、つまり、30.4%が空き家になると予測がでています。

なんと3軒に1軒が空き家になるということです。

アメリカの例を見ますと2013年に破たんしたデトロイト市は当時、空家率が非常に高く、放火など犯罪件数も増大していたそうです。

空家の増加は治安の悪化につながっているのです。

何とか「空き家対策」をしなければなりません。

京都市の空き家対策

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京都市では空き家対策として国の「空家等対策の推進に関する特別措置法」の施行(平成27年5月)より先駆けて、「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」が平成26年4月施行されました。

国の特別措置法では、そのまま放置すれば倒壊等して著しく保安上危険となり、衛生上有害となる恐れのある空き家を「特定空き家等」と位置付け、所有者に対して市が改善や撤去を命令できる権限を付与し、従わない場合は行政代執行による撤去もできるように定められています。

もちろん前述の危険家屋(特定空家)については平成28年度から固定資産税の優遇税制が撤廃されるようになりました。

国の特措法が放置した建物を解体に誘導する方針であるのに対し、京都市の条例は「活用」に重きを置いている点で相違しています。

私たち宅建業者は、京都市の空き家の有効活用のアドバイザーとして「空き家相談員」の登録をしています。その数300余名。

すごい数だと思いませんか?

なおかつ、もう一つ素晴らしいことがあります。

相談員は基本的にはボランティアで相談に乗るのですが、この条例の施行に伴い、依頼者が相談員に有効活用の依頼をしてきた場合、事業者として仕事に入っても良いという判断を京都市がしてくれたことです。この判断は画期的な事です。

今まで京町家の相談員をしていて、このところが一番やりづらい所でした。

せっかく有効活用をしてあげようと思っても会社名も言えず、名刺も渡せずに相談が終了していたのです。

その場で話をして中途半端なアドバイスで終わってしまっていましたから、今回の措置は大英断です。

また、この条例により、京都市から空き家活用・流通促進支援として最大90万円(京町家の場合)の補助金が支給されることになりました。

11万戸の空き家がうまく流通に乗れるような施策は大いに利用していくべきだと思います。

参考:京都市平成25年度の住宅・土地統計調査

ファイナンスと税制がもたらすもの 

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私は常々、住宅政策の基本は「ファイナンス」と「税制」だと思っています。

昔の話で恐縮ですが、バブルが崩壊する前、土地神話に踊らされた不動産業者が高騰する不動産を我先にと購入していた時に、国は国土法という法律で価格の高騰を抑えようとしていました。

不動産の売買を届け出制にして価格を押さえようとしたのですが、最初1000㎡、次に500㎡そして300㎡、最後は100㎡つまり30坪の土地の売買まで届出をさせたのです。

しかし国土法では土地の価格は何も下がりませんでした。

京都で公示価格の一番高い商業地「四条通河原町西入る」に、みずほ銀行の支店(昔の富士銀行の支店)がありました。

ピーク時の公示価格は坪1億円です。

平成2年4月に金融庁は不動産向け融資の伸びを抑えるため、全国の金融機関に総量規制という融資規制を指令しました。

これは平成3年12月まで続きましたが、金融機関の貸し渋りを招き、なんと国土法でいくら届け出で規制しても下がらなかった土地があれよあれよと言う間に下がり始めたではありませんか。

総量規制が敷かれてから14年ぐらい経ったでしょうか、坪1億円もする土地が平成15年には坪700万円になってしまいました。なんと93%値下がりしたことになります。ファイナンスの影響力を身に染みて感じた出来事です。

税制の昔話も一つご紹介します。

現在はありませんが、昔、土地の転売で利益が出た際に、通常の所得税とは別に重加算税がかかるようになりました。

これは土地のみの売買だけではなく、土地の上に建物を建てて販売した場合にもかけられました。

建売住宅を販売していた不動産業者は慌てふためきました。

加算税がかかれば利益が飛んでしまうのです。そこで国は条件付きで重加算税をかけない政策を打ち出しました。

建築基準法を守り、なおかつ優良と言える設備を備えた「優良住宅」を建てた場合には重加算税をかけないというものでした。

この優良住宅という制度ができると、今まで違反建築の分譲住宅をしていた業者がすべて優良住宅を建て出したのです。

京都市はそれまで違反建築撲滅運動として、パトロールを強化して減らす努力をしていましたが、一向に減らない状態だったのに、「優良住宅」を打ち出したら途端に違反建築がなくなりました。

当時の八清もすべて優良住宅を取得し、違反ゼロの建売住宅を販売していました。

このように「ファイナンス」や「税制」をうまく活用すると、規制を厳しくして取り締まるより数段良い結果が生まれるようになるという事を実感しました。

そこで私は「ファイナンス」を利用して「空き家問題」を解決できないだろうかと考えました。

空き家対策としてのセカンドハウスローン

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私はセカンドハウスの住宅ローンをもっと広めるべきだと思っています。

住宅ローンは戦後、マイホームブームが到来して素晴らしい発展をしました。

団体生命保険付きや病気の保証付きローン、そしてシングル女性の住宅ローンなど昔では考えられないユニークなローンまであります。

固定金利ローンや変動金利ローンの選択など充実しています。

しかしあくまで住宅ローンはセカンドハウスではその優遇が使えないのです。

金利も安くはありません。

しかし時代は変わりました。

京都でも14%もの空き家がある時代です。

6月27日の京都新聞に、所有者のわからない土地が日本全国に20%もあると言う記事が掲載されていました。

これは不動産が値下がりして、今までの土地神話がなくなり、評価されない土地が増えていることを意味しています。

今、日本のほとんどの金融機関は「セカンドハウスローン」に熱心ではありません。

昔のままの制度で住宅ローンを取り扱っています。

長期・低利の住宅ローンは居住用の住宅のみしか取り扱いません。

私は日本の住宅ローンがアメリカのようなローンになれば良いのではと思っています。

アメリカでは「セカンドハウスローン」どころか「サードハウス」でも住宅融資をしています。

昨今、セカンドハウスは贅沢なものではないのです。

仕事のオンは都会でオフは田舎暮らしという二地域居住の暮らし方を楽しんでいる世代もあります。

これが今のライフスタイルなのです。

セカンドでもサードでもどんどんローンを貸し出して空き家をなくすことがこれからの住宅政策で一番大事な事ではないかと思っています。

人口が減ってきて住宅が余る時代のローン政策は1箇所の居住のみに縛られる必要はありません。

「賃貸」と「所有」を使い分ける住まい方や、老後の移住計画にセカンドハウスを購入するとか、いろんな生活パターンがどんどん生まれてくると思います。

セカンドハウスローンを広めて空き家を一つでもなくすよう金融機関に訴えていきたいと思います。

10年以上かけて「京町家ローン」を京都の金融機関に持ち掛けてきたように、焦らずに説得していきたいと思っています。