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京都の魅力の1つとして、文化や歴史を感じるまち並みを上げる人も多いのではないでしょうか。

そんな京都らしい魅力あるまち並みを構成しているのが京町家です。

京町家は景観が美しいだけではなく、生活文化や暮らしの美学が京都の千年以上の歴史の中で受け継がれてきたものであるとも言えます。

しかしながら、まちの開発や生活様式の変化などもあり、今では年間約800軒の京町家が取り壊され、空き家も増えているのが現状です。

行政の京町家保全の取り組み

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京都市では京町家を「本市固有の趣のある町並み及び個性豊かで洗練された生活文化を象徴するものであり、魅力あるまちづくりに欠くことのできない市民の貴重な財産である」と位置づけ、このままでは京町家がなくなってしまうという危機的な状況に歯止めをかけるべく、平成29年11月に「京都市京町家保全および継承に関する条例」を制定しました。

この条例では京町家の所有者だけでなく、関わるすべての人や事業者、団体、行政などが連携して保全・継承に取り組むよう推奨されています。

この条例の大きな点として、京町家解体の事前届出制度が定められています。

取壊しを事前に把握し、保全・継承に繋げる仕組みとして平成30年5月から全面施行されており、京町家を解体するには1年前までに届出の提出が必要となります。

届出後から解体までなぜ1年もの期間を有するのか?

それは、改修や維持修繕に対する助成制度の情報提供や、事業者団体などと連携し活用方法の模索や活用希望者とのマッチングなど、京町家を保全・継承するための支援や提案をするための期間となっているからです。

わたしたち八清も、京都市に登録された不動産関連団体から専門事業者として協力しています。

しかし、これらの制度が制定された後、届出がされても、実際に新たな活用方法や活用希望者が見つからず、解体されていく町家が後を絶たちません。

このような状況のなか、昨年秋、洛中の大型京町家について八清が登録事業者として関わり、実際に活用希望者とのマッチングが成立に至りました。

今回はその「マッチング制度成立第一号」となった京町家の所有者様に話をうかがいました。

参考

京都市京町家の保全及び継承に関する条例についての詳細は京都市のページをご確認ください。

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中京区御幸町通の大型京町家

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今回、「京町家保全条例」を管轄する京都市都市計画局まち再生・創造推進室に、住まなくなった京町家について所有者様より相談があり、都市計画局まち再生・創造推進室より所有者様に八清を紹介いただきました。

当該の京町家は中京区の御幸町通に面する、11部屋、台所、茶室、書庫、蔵、小屋裏収納、庭があり建物面積は延約89坪もある大変立派な京町家です。

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ご自宅は別にあり、この京町家は現在使用しておらず、手入れのためにたまに訪れる程度となっていました。

所有者様にうかがうと「父は滋賀県で商売をしていたんですが、戦後京都に出てきて商売を広げていきました。

私が10歳くらいのとき、60年ほど前にこの町家を店舗兼住居として購入し、家族で暮らしていました」

お住まいだったご両親が他界され、ここ15年ほどはお客様を呼んで行うお茶会などで、年に数回利用していたそうです。

お父様が買われる前は呉服関係のお家の方が所有されていたそうです。

この町家はもともと2軒だった家が、1軒になったそうで、1軒は明治時代、もう1軒は大正時代に建てられたと記録に残っています。

明治時代の地図を見ると北側は旅館であったことがわかったそうで、以前の所有者さんが2軒購入して蔵や茶室などを大正時代に造って1つの家として使用されていたそうです。

活用の相談からマッチング成功!

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「住んでいないと傷みが進みますし、手入れも大変なので、有効活用できないかと当初は友人の不動産業者の人に相談しました」

借りたいという話は何度かあったそうですが、うまくいかず、解体して駐車場にしてはどうかという提案もあったそうです。

そんなある日ポストに「重要京町家指定しました」というハガキが入っていました。

「全然どういうことかわからなかったので、電話をかけて問い合わせました。

解体するには届け出が必要で、届け出をしないと罰金も科すというのに、家の中を見もせず、説明もないまま指定されるというのには疑問を感じました。

しかしながら、この町家を残したいという思いがあったので、間取り図を用意して、耐震性を調べてもらい、書類を用意して京都市の担当課長を訪ねました」

その時初めて、町家を貸したい人と町家を利用したい人を引き合わせてくれる「マッチング制度」という制度を知ったそうです。

「初めにマッチング制度で紹介してもらった会社は、借りたいとは言うものの、どうやら飲食店に転貸をするつもりのようで、いつから借りるとか、設計図など具体案が全然出てこず、1年近く引っ張られましたが何もできず、結局こんなんあかんわと思い別の人を紹介してもらいました」

次の飲食店をやりたいという方とは具体的に進みかけたものの、このコロナの影響もあり少し不安に感じる部分もあってお断りしたそうです。

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(入居者募集の際のページ)

その次に紹介されたのが八清でした。

「八清さんは私の希望に沿った条件で、Webサイトで入居者募集をしてくれるということでした。

京町家の再生や京町家を紹介することを得意とされているということを知り、お願いすることにしたんです」

そこで入居者さんを見つけることができ、マッチング制度を利用した第一号の成功事例となりました。

「借り手さんのお話を聞くときちっとした会社さんでした。

着物や茶道、華道、侍など日本古来の文化を海外から来られる観光の方に体験してもらい紹介するという仕事をされており、私の町家が庭や座敷、茶室もあってぴったりだということで借りていただけることになりました」

借主様も「こういう物件は今やまち中にはなかなか残っていないので、大変喜んでいる」とのことで、貸主様、借主様の双方に喜んでいただき八清としてもうれしい限りです。

歴史的風致形成建造物に指定

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(画像はイメージ)

八清に入居者募集の依頼をしたのと同時期に歴史的風致形成建造物に指定されました。

「私にとって悪くない条件だったので指定を快諾しました。

一番大きいのは相続税が1/3控除されること。

あと、外壁など外から見えるところの修繕は助成金があります。

大きな家にとってはわずかな金額ではありますがそれもメリットの1つですね」

また、指定解除は難しい手続きをしなくても解除することが可能だそうで、解体や売却の手続きも煩雑ではなく、国の指定のように1度指定されたら外れることはできないというようなことはないそうです。

参考

京都市の歴史的風致形成建造物についての詳細は京都市のページをご確認ください。

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大型町家を維持する苦労

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やはり大きな京町家を維持していくのがなかなか大変なことのようです。

「私はあの家で育ち父の仕事を横で見ていたので、残せるものは残したいという思いはありますが、次の世代には重荷になると思います。

次の世代が維持していくのが大変だから貸そうという考えになったんです」

きれいにしておきたいという思いから、天気のいい日には行って、風を通したり、職人さんにきてもらって庭の手入れをしたり、掃除をしたりしているそうです。

もちろん、大きくなればそれだけ大変で、戸を開けて閉めて回るだけでも30分はかかるそうです。

庭の掃除や植木屋さん、傷んでいるところの修繕など費用もそれなりにかかります。

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「昔のまんま残そうという気持ちがあったので、ガラス戸や障子のままにしています。

それなりの維持の仕方をしないと納得できないので、手間をかけてきました。

使われている材料の質もいいし、建具もいいものが使われている。

お茶会をするとなると、お客様に上がってもらう部屋だったり、庭の見え方だったり、伝統的な間取りは計算されているんだなと実感します」

昔のまま残すというのは投資的な考えの方や財力的に余裕のある方でないと維持するのはなかなか難しいのかも知れません。

「まち中だと駐車場も高いので、家の前に車を停めようとしますよね。

そうすると、家の前をシャッターにしたりして、町家の雰囲気が変わってしまいます。

私も車は月極を借りて停めています。

なかなか生活をするのは大変なことですよ」

京都のまちが変わり、若い人たちの生活様式もだいぶ変わってきています。

小さいころから町家での暮らしをしてきたわけではない、現代の暮らしに慣れている世代が町家で暮らすのは大変なことかも知れません。

「やはり八清さんでされているみたいに今の暮らしに合った改装をしないと生活の場として維持していくのは大変だと思いますね」

様変わりするまち並みと暮らし

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所有者様の子どものころ御幸町通は旅館が多かったそうですが、今や大きな旅館はみんなマンションに代わりました。

町家が残っていてもそのほとんどが飲食店などになっています。

すっかりまちの様相が変わり、町内で昔からある家は数軒だそうです。

一方、京都らしいまち並み、経年の美しさをもつ町家そのものに魅力を感じている人は多くいます。

「飲食店やアパレル店などさまざまな業種の方が見に来られて検討いただきました。

大きすぎるということもありなかなか借り手がみつかりませんでしたが、やはり京町家には魅力が詰まっているんだと感じています」

建てられた当時の生活や暮らしの美学、職人の技術を今に伝える町家。

その経年美を新たに造ることはできません。

今回マッチングがうまくいったのは立地条件がよく、丁寧に手入れがされた魅力ある物件であったこと。

そして、所有者様が任せきりではなく、熱心に何度も京都市の担当課に何度も足を運んだことにあると思います。

「今回、いい借り手さんを見つけてもらって喜んでいます」

八清としては所有者様のその一言が聞けて本当に良かったです。

様々な事情から町家を解体するという選択をしなければいけないのは仕方のないことかもしれません。

町家を維持していくのが大変、快適な生活をしたいと考えるのは当然だと思います。

しかし、京都に住んでいる方の多くが、京都の美しい景観を守れるものなら守りたいと考えているはずです。

少しでも八清が京都のまち並みを次の世代へ残すお役に立てれば幸いです。

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