こんにちは。
メディアデザイン部の加地です。
前回の出張研修で「アートとまちの関わり合いの相乗効果【八清の自由研究2023 その29】」をレポートしましたが、その第二弾です。
前回の記事

アートとまちの関わり合いの相乗効果【八清の自由研究2023 その29】
日本の芸術祭の中でも歴史のある横浜トリエンナーレの取材を行いました。
やっぱりアートとそのまちの関わりが好きだし、学びたい!という事で今回はアートとの結びつきが深いまち、直島に行く事を決めました。
直島は、「アートの島」として国内外から注目され続けています。
1980年代後半から、ベネッセホールディングスと建築家・安藤忠雄の協力のもと、現代アートを活用した地域振興が進められてきました。
1992年に開館した「ベネッセハウス」は、宿泊と美術館が一体となった特別な空間として注目を集めました。
1998年から始まった「家プロジェクト」では、島の古民家を活かしながら、国内外のアーティストの作品を展示する試みが行われました。
さらに、2004年には「地中美術館」がオープンし、クロード・モネの「睡蓮」シリーズをはじめ、ジェームズ・タレルやウォルター・デ・マリアの作品が展示されるなど、世界的に評価されるアートの拠点となりました。
2010年以降は「瀬戸内国際芸術祭」の開催により、さらに多くのアート作品が島に点在するようになり、国内外からたくさんの人々が訪れる「アートの島」としてますます魅力を増しています。
そんな中、私は「ベネッセハウス」の美術館に泊まる、というコンセプトに強く惹かれました。
前回の旅では部屋自体がアート作品の中に泊まるでしたが、美術館に泊まるとはどんな感覚になるのか気になりました。
例えば、映画館も行く事からワクワクが始まっているのは皆さんもよくあるのではないでしょうか。
そんな感覚で美術館自体も「これからアート作品を楽しむぞ」というスイッチを入れてくれる特別な場所です。
そんな場所にずーーーーっといれる事に単純にワクワクしました!
アート作品の関わりかたの新たなアプローチを体感しにいきたいと思います!
いざ直島へ
新幹線に乗り、岡山駅まで移動してそこからバスに乗って宇野港に到着です。
こぢんまりとした港です。
地元の方のような人や旅行客たちが待合室にすでに沢山いました。
直島行きのフェリーが到着すると外国人の方もたくさんおられました。
直島へは学生だった10年前に行った事があるのですが、その時と違い外国の方の数が非常に多かったです。
オフシーズンなのでゆったり行けると思ってたのですが、意外にも賑やかなフェリーの時間となりました。
直島が国内外からも支持されている事を肌で感じた瞬間でした。
フェリーに10分ほど揺られて直島に到着しました。
あの有名な赤カボチャが出迎えてくれました。
ベネッセハウスミュージアムに宿泊
港の近くでレンタルバイクを借りてベネッセハウスミュージアムに向かいます!
ちなみにベネッセハウスでは宿泊者の為の無料バスもあります。
この日は天気もよく原付バイクで散策するにはちょうどいい小春日和でした。
気持ちいい風を感じながら到着しました。
入口はベネッセハウスのミュージアムと全く同じで、あれ!?と思ったのですが、スタッフさんに案内されてびっくりしました。
思った以上に美術館のままのフロントがあり、レストランがあり、すこし奥まった所に客室がありました。
シームレスに美術館とホテルが融合しています。
ホテルに来てはじめにホテルの中を散策するという事は経験ある方は多いのではないでしょうか。
そのホテル散策が、美術館観賞とほぼイコールに近い状態になっています。
閉館しても、作品を観賞する事ができます(23時まで)。
ナイトミュージアムの体験もできます。
10年前にもベネッセハウスに訪れていて、好きな作品がとても多くありました。
須田悦弘「雑草」、杉本博司「タイム・エクスポーズド」 、イヴ・クライン「青のヴィーナス」 ...その中でも特に好きなのが、ブルース・ナウマン「100生きて死ね」です。
この作品は「○○ AND LIVE」「○○ AND DIE」という文字が100個ネオンサインで描かれていて、ランダムに点滅します。
そしてあるタイミングで全てが光り、そして消えます。
まるで人の一生を美しく表しているようです。
そして、誰もいない暗い美術館でひとりこの作品と対話をしたのは非常にいい経験になりました。
そして、この作品がさらに好きになりました。
ホテルの散策のようで、美術館を歩き回る。
誰もいない夜に美術館を堪能する。
朝目覚めて、眩しい朝日の中の作品を鑑賞する。
いつもとは違う条件、時間というだけでワクワクは倍増、いやそれ以上のものになりました。
ベネッセハウスミュージアム
ホテルを出て直島を堪能する
ベネッセハウスミュージアムでの体験は今までになくここでしかできない貴重な体験でした。
でも美術館はここだけではないので、直島のまちに出てさらにアート散策してきました!
語り切れないくらいあるので、ピックアップしてお伝えします。
クロード・モネの最晩年の「睡蓮」シリーズが有名な地中美術館。
特に私が印象に残ったのはウォルター・デ・マリア「タイム/タイムレス/ノー・タイム」です。
たまたまでしたが、その作品の部屋に誰一人おらず、私ひとりで作品を独り占めできたので空間をつかった作品に圧倒されました。
地中美術館
今回初めて訪れた李禹煥美術館にやってきました。
もの派の国際的に有名な作家李禹煥と安藤忠雄建築とコラボレーションした美術館です。
「もの派」ってなんかむずかしなと思っていましたが、これは空間からしっかりと考えられているためか、部屋に入る度にがつんと作品を感じる事ができました。
この二人の作家の親和性の高さを感じました。
李禹煥美術館
ANDO MUSEUMは安藤忠雄が築100年の古民家を改装し、古民家と現代建築を組み合わせて表現した建築です。
その中に安藤忠雄氏のこれまでの活動や直島の歴史などが展示されています。
小さな規模のギャラリーでしたが、木とコンクリートの組み合わせが新鮮でおもしろく、また安藤忠雄らしい光と影の演出も古民家の趣にもあっていて、写真を撮るのがとても楽しかったです。
ANDO MUSEUM
そしてこのミュージアムがあるエリアは古民家がずらっと並んだ趣のあるエリアでした。
島の静かで長閑な雰囲気とこの焼杉の外壁の古民家がとてもよく、すこし歩いてみる事にしました。
島のカフェと島の人達のお話
ANDO MUSEUMからすぐ近くにカフェを発見しました。
Hifumiyo Coffeeさんです。
カフェラテとマフィンを頂きながら、店長さんに軽くお話しを伺いました。
店長さんは兵庫県から移住されてきて、このカフェをオープンされたそうです。
オープンにあたり、この素敵な物件に巡り合うのに苦労されたそうです。
この素敵なまち並みのエリアは景観保護地区にあたるそうですが、それ以外のエリアでは建て替えられていることがほとんどで、古民家を残すというよりは快適性や安全性が優先されてしまうのは必然かもしれません。
そして残っている古民家を探そうとしても、内々で決めてしまう事が多く、空き家バンクはあるもののそこに掲載される物件はごくわずかだと仰っていました。
京都とはまた違った、年月をかけて作り出されるこの味わい深いまち並みをもっと有効に活用する意識が広がればいいのになと思いました。
これだけ自然を大切にしている直島ならきっと古民家の重要性も気付く方は少ないはずと思っています。
カフェラテとマフィンはとても美味しかったです。
こんな素敵な古民家で頂くとまた味も格別です。
Hifumiyo Coffee
カフェラテを飲み終え、貴重なお話を話してくださった事に感謝してお店をあとにすると、ひらひらと揺らめいている青い旗に目が留まりました。
なにかな?と近づくと「おにぎり食べませんか?」とおばあさんの声がしました。
見ると、そこではキッチンカーでおにぎりを販売していました。
キッチンカーの店員さんとおばあさん二人が昼下がりのおしゃべり会を開催中でした。
楽しそうだったのでその輪に入れていただくことにしました。
おにぎり販売の天と美雨の店長さんも千葉からお子さんと移住されてきたそうで、お子さんは休みの日はおにぎり販売のお手伝いもしているそうです。
おばあさん達は生まれも育ちも直島!
直島の暮らしには不自由なく、ゆっくりしたこの空気がいいからどこにも行きたくないそうです。
確かにこの日は暖かく日良い天気ではありましたが、過ごしやすく、車の音もほとんど聞こえてこない穏やかな空気が流れていました。
天と美雨
また少し移動していると、ひと際雰囲気のある古民家を発見しました。
カフェと書いてあるけど...まるでおばあちゃんの家の庭のような雰囲気。
ワクワクしたので、中に入ってみることにしました。
中では本や雑貨も販売されていました。
その壁に飾られたおもちゃたちの中には昔なつかしい駄菓子屋で見かけたおもちゃもあって子ども心を思い出させてくれます。
カフェの名物と書かれていたプリンとクリームソーダのセットを頂きました!
これも懐かしさ満点の見た目。
すごくかわいい...!と思わずため息が出ました。
この雰囲気ある古民家は店長さんが出会った時に心奪われたそうです。
それをリフォームしつつ活用されています。
ただ、古いではなく直島のゆったりとした空気感がそこに息づいているようにも感じられるいい古民家でした。
島小屋
終わりに
直島でのんびりと2泊3日を楽しみました。
のんびりとした予定でしたが、とても印象深い事が沢山ありました。
好きな作品と時間も忘れ夜にゆっくりと見てその作品への理解を深めたり、瀬戸内の景色に息をのんだり、地元の人と話したり、古き良き古民家に触れたり...
サイト・スペシフィックアートが確立されることによって、直島でしか出来ない体験とそこに様々な人が訪れ、移住したり、そしてさらにまちが豊かになる様子を垣間見ました。
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八清社員が日本各地へ興味が赴くままでかけ、見て、聞いて、普段の業務では得られない知見を広めてきましたのでレポートします。
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