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中国人の私は北京から離れた南の地域に住んでいるため、18歳の時に初めて北京を訪れました。

東京には10回以上行ったことがありますが、今回の北京は2回目です。

とても楽しみにしていました。

高貴な宮殿、故宮へ

今回最初に訪れた先は故宮です。

入場は最低でも一日前に予約が必要で、時間は午前と午後で分かれています。

ランチの後に午後の部に故宮を訪れる予定になっていました。

故宮の近くには、故宮の城壁に面している有名な北京ダックの店があります。

いつも行列ができており、最大で500グループ待っていることもあります。

その店の名前は「四季民福」です。

運よくすぐ席に案内してもらいました。

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窓側席からは故宮の東門が見え、店内ではダックを焼く様子や調理する様子を見ることができます。

やはり北京ダックの美味しさは圧巻で、鴨の皮に少し砂糖を付け、口に入れるとすぐに溶けてしまいました。

皮に含まれている脂みと砂糖が見事に絶妙にマッチして本当に美味しかったです。

これまでに食べた中で一番美味しい北京ダックでした。

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ランチを終え、故宮に向かうことにしました。

故宮は、北京の中心部に位置する明清時代の宮殿で、約600年の歴史があります。

かつては中国皇帝の居住地として知られ、現在は博物館として一般に公開されています。

故宮は世界中で最も保存状態が良い最大規模の木造建築群の一つです。

また世界五大宮の一つとされ、世界遺産にも登録されています。

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建物は対称的なデザインであり、赤い壁、黄色の瓦、細かいところまで文化と伝統が感じられます。

私が特に注目したのは脊兽(屋根の上にある聖獣)です。

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ほどんとの屋根に聖獣が並んだ装飾が見られます。

聖獣の数と形は様々です。

しかし順番は決まっています。

先頭から 仙人騎凰、龍、鳳凰、獅子、海馬、天馬、押魚、狻猊(サンゲイ)、獬豸(カイチ)、闘牛(トギュウ)、行什があり、全部で11個あります。

数が多いほど建物の階級が高くなります。

故宮の太和殿は中国で唯一、11個すべての聖獣が乗っている建物です。

他では10個や9個乗っている宮殿は見られます。

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出典:百度百科

これらの聖獣には階級の象徴、魔除け、火除けの意味があり、また雨漏り、さび防止の役割を果たしています。

他に面白いところは、飛檐垂木(ひえんだるき)の芸術です。

日本ではなかなか見ることのできない、様々な模様が施された鮮やかな垂木があります。

正方形と丸の垂木にはそれぞれ異なるデザインが施されています。

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よく見られるのは卍(万歳の意味)と宝珠(龍眼の例え)です。

他にもコウモリの形も見られます。

中国では蝙蝠(コウモリ)の中国語「蝠(フー)」と「福(フー)」の発音が同じとされ、縁起が良いとされています。

故宮の敷地は72万平方メートル(東京ドーム約15個分)あり、さらっと見ても4時間かかりました。

見どころが非常に多いため、もっと滞在したかったです。

故宮の出口から出てすぐ、道路を挟んで向かい側に景山公園があります。

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山頂からの故宮の展望は素晴らしく、写真を撮りました。

この景色を見れば、昔の王城での生活をいろいろと想像できるのではないでしょうか。

広大な天壇公園

二日目は天壇公園に行きました。

天壇公園は明朝から清朝にかけて、皇帝が天に対して祭祀を行った場所であり、青瑠璃瓦で葺かれた三層の丸屋根の祈年殿が最も有名です。

天壇公園の敷地は非常に広大で、故宮の4倍くらいのサイズがあります。

全部を回ることはできないため、祈年殿を中心に観覧しました。

祈年殿にたどり着く前に最初に訪れたのは圜丘壇(かんきゅうだん)という三層の円壇でした。

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圜丘坛のデザインには、大量に数字「9」が取り入れられています。

古代の思想では、「9」が最大の数であり、至高の存在であると考えられていました。

床にある石板の数から見ると、壇上の中心の石に同心円状に石板が敷き詰められています。

もっとも内側の円が9で、外側は全部9の倍数です。

石の手すりの数から見ると、圜丘坛の最上層には36枚の手すりがあり、中層には72枚、底層には108枚で、各層の手すりはいずれも9の倍数です。

さらに、階段の段数から見ると、圜丘坛は4つの方向に階段があり、各坛の階段は9段ずつです。

このデザインは本当に言葉を失うほど素晴らしいものでした。

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出典:光绪朝《钦定大清会典图》

圜丘坛の次は皇穹宇(こうきゅうう)という宮殿です。

こちらは一階建ての丸屋根の建物で、歴代皇帝の位牌が安置されています。

皇穹宇を通ると祈年殿が見えてきます。

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故宮の黄色の瓦とは異なり、祈年殿の屋根には青い瓦が使用されています。

この色には大きな意味があります。

古代の中国では黄色は帝王を象徴する色であり、故宮では黄色の瓦が主に使われています。

しかし、天壇は天に対する敬意を示す場であり、帝王の色を使用すると天に失礼とされたため、わざと天の色に近い青い瓦が選ばれました。

青い瓦を使用することで、建築物全体が神聖で天に繋がる存在として捉えられ、祭祀の儀式にふさわしい雰囲気を醸し出します。

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しかし天壇のすべての建物は青い屋根かというと、そうではありません。

帝王が斎戒に用いる「斎宮殿」という建物は緑の瓦が使われています。

緑は黄色の次に位置づけられる色で、緑の瓦を使用することで、天に臣従し、天命を尊重することを表現しています。

そのため、天壇などの祭祀建築では通常、黄色の瓦は使用されません。

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北京には古い建物がたくさん残っている一方で、非常に現代的または未来的な建物も存在します。

個人的に一番面白いのはと思うのはCCTV(中国中央テレビ)の本部です。

この建物は2001年に1000億円相当の費用をかけて建設されました。

2つのタワーと、地上と上空でそれらを繋ぐ2つのL字型のブロックから構成されており、中央部には大きな開口があり、非常に珍しい形をしています。

内部はCCTVの関係者以外立ち入り禁止となっています。

そのため、その向かい側の高い位置からこのビルが見られるJen国貿ホテルを予約しました。

ホテルの窓から見る景色は、地面から見る景色とは全く異なり、全体の構造が見えてきました。

このビルの重心が空にあるように見えますが、一体どのように成り立っているのか疑問に思いました。

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設計士のインタビューによると、建物の構造計算は、特異な形状と耐震性の確保が求められるため、非常に難しい課題が多く存在しました。

しかし、構造設計の分野で実績のある設計会社は、外壁の支柱の配置などに関する解決策を提供しています。

不可能に挑戦するのは現代建築の重要な側面ではないかと思いました。

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夜にはホテルの近くにある火鍋店で食事しました。

再び歴史と現代が融合した衝撃を受けました。

北京の伝統な火鍋は中央に筒がついているのが特徴的で、スープは生姜、棗、葱、枸杞の実が入ったクリアなスープです。

羊肉、牛肉、野菜などを入れてしゃぶしゃぶしてから食べます。

その火鍋店は「新京熹」という名前で、現在北京で流行っている新しい形態の火鍋店らしいです。

お店に入るまでに1時間待たされました。

店の内装は中国伝統風のデザインで、西洋風レストラン特有の落ち着いた雰囲気を演出するため暗くしてあります。

真ん中に舞台があり、その後ろにはバーカウンターがありました。

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料理が提供され、おおよそ10分後にテーブル上の照明が急に暗くなり、灯りが舞台上に集まって、内モンゴルダンスと伝統楽器二胡の演奏が急に始まりました。

バーテンダーが火のついているボトルを操りながらダンスする光景も見ることができました。

美味しい料理を楽しみながら、非日常的なエンターテインメントに身を委ねることが、現代の人々が求めるものではないでしょうか。

一つの体験だけではなく様々な感覚を同時に刺激することが、人気の秘密のようです。

古都の雰囲気に触れながら、北京は歴史と未来が交錯する魅力的な都市であることを実感しました。

今度はもっと深くこの都市を研究したいと思います。