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メディアデザイン部の小島です。

普段はひとつひとつの物件ページを作ったり、写真を撮るなど、八清サイトで京都の暮らしや住まいの魅力を発信する仕事をしています。

私が会社からの出張研修ということで選んだのは、金沢。

京都のまち並みを作る会社に居ながらまだ訪れたことがなく、古いまち並みを残すまちとしてずっと気になっていた場所です。

少し調べてみると、金沢は観光するのにもコンパクトなまちという記事を見かけました。

まだ小さな子どもとの旅行を計画していたので、ちょうど良い移動距離で観光が出来るというのも金沢を選んだポイント。

良く晴れてあたたかな11月に訪れました。

大型町家を利用した和モダンカフェ

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特急のサンダーバードに乗り、京都から約2時間ほどで金沢駅に到着。

金沢でまず訪れたのは、町家を改装して作られた台湾料理を楽しめるカフェ「四知堂kanazawa」。

こちらの町家ではもともと油問屋が営まれていたそうで、間口の広さや吹き抜け空間の大きさなど、建物の大きなスケール感にとても驚きました。

入口を入ったホールの床にはその昔の塗料の跡が残されていて、往時の姿を思い起こさせます。

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もとはいくつかの部屋だったところを繋げて作られたレストラン席に案内されると、灰色の壁に黒いテーブルというモダンなインテリアに落ち着いた照明が灯ったほの暗い空間。

そこから見る整えられた和の庭は、絵を眺めているような美しさが感じられました。

私はホタテ出汁の効いた台湾粥、子どもらは甘辛い味付けの豚肉が乗ったどんぶり、魯肉飯(ルーローハン)、そしてデザートにはやさしい味わいの豆花(トウファ)を美味しく頂きました。

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四知堂 kanazawa

金沢市尾張町2-11-24

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北陸の町家ならではの特徴を知る

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お腹がいっぱいになった後は、古いまち並みが残るひがし茶屋街へ。

「ひがし茶屋休憩館」という、江戸時代の建物を修復・再現してある施設の前を通ると、地元の方に建物を説明して頂けました。

京都の町家にはない軒下の「雪よけ」や、通常は開け放して使われる表の板間に雪が吹き込むのを除けるためのシャッターのような建具「蔀戸(しとみど)」の仕掛けなど、北陸の町家ならではの特徴があることを知りました。

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ひがし茶屋休憩館

石川県金沢市観音町1-3-8

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人力車に乗って茶屋街めぐり

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ひがし茶屋町では、人力車にも乗りました。

人力車は京都では乗ったことがなく、家族みんなが初めての体験。

予想外にも女性の俥夫(婦?)※さんが家族4人を乗せて回ってくれました。

金沢は雨が多く、この日のように晴れていることは珍しいという話をしてくれたり、近くを流れる浅野川の穏やかな流れと山並み、古い橋の作る絵になる景色を見せてもらったり、観光客の多いメインストリートから逸れて、裏道や武家屋敷街を通ってもらったり。

明るい声で説明してくれる女性の俥夫さんだったので、子どもたちも初めての経験に少し緊張しつつも、楽しんで乗っているようでした。

※俥夫=人力車を引く人

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川沿いのお茶屋街、主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)にも人力車で訪れました。

京都の川沿いにあるお茶屋街と言えば先斗町(ぽんとちょう)ですが、どこか通じる雰囲気。

今も営業されているお茶屋さんがあり、三味線や太鼓の音が時折聞こえてくることもあるそうで、ひっそりとした中にも華やかな風情がありました。

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金沢のお茶屋街のまち並みを印象付けている繊細な細い格子。

これは木虫籠(きむすこ)と呼ばれます。

意匠の美しさだけでなく、一本一本が内側に向けてすぼむ、台形の作りになっているおかげで、外からは見えにくく、内側から外が見えやすいという効果があるそうです。

確かに格子の内側を見ようとしても、なかなか中の様子はうかがえません。

これは、馴染みのお客さんが外を通った時に玄関ですぐに迎えられるようにという、茶屋のおもてなしが現れた意匠であることを俥夫さんに教えてもらいました。

子どもも一緒に乗り、およそ30分の人力車散策だったのですが、あまりにもスーッと動く揺れの少ない人力車の乗り心地の良さと、ぽかぽかと心地よい日差しに、最後は2人とも膝の上で寝てしまい...。

人力車から降りると起きてくれたので、そこからひがし茶屋街のメインストリート散策へ。

金沢観光人力車 浪漫屋(ろまんや)

石川県金沢市東山3丁目1-23

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ひがし茶屋街で茶屋の粋を味わう

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ひがし茶屋街は、修学旅行生をはじめ、観光で訪れている人でとてもにぎわっていました。

重要伝統的建造物群保存地区に選定されているこの地区には、144棟の建物があり(平成30年時点)、そのうちの94棟が伝統的建造物といい、歴史ある街並みを今に伝えている地域。

その中で現在見学が出来る、かつてのお茶屋さん「志摩」の建物を見学しました。

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金沢のお茶屋の建築は、2階がお客様をもてなす空間として作られており、1階より高くなっています。

玄関を入ると2階へ上がる階段が近くにあり、お客様は2階の座敷へと上がります。

お茶屋は開放的で優美な造りになっており、柱や造作材は全て漆塗りで、七宝の引手など、美しく繊細な意匠が至るところで見られました。

見学は1階で荷物を預けてからになるのですが、時代を経たこの繊細な建物を残しながら伝えていくことの難しさがあることが感じられました。

ちなみに、まち並みを見学した時にはほとんどの茶屋の2階は雨戸が閉まった状態でした。後で調べてみると、この雨戸は全て引き込むことが出来るそうで、かつてはお座敷が始まる時間になると全て開け放され、軒下には提灯をかけて風情を楽しむ、といった使い方がされていたといいます。

まち並みの中にある、今はカフェとして利用されているお茶屋建築を見てみると、2階が客席になっており、開け放してある様子が少しわかりました。

その昔は夜になると軒を連ねるお茶屋の軒下の提灯にほの明るく灯がともり、2階に浮かぶ座敷から三味線や唄、遊芸を楽しむ音が聞こえてきたのでしょうか。

建物が本来使われていた頃のあり方に思いを巡らしてみると、お茶屋の粋なしつらいが少し理解できたような気がしました。

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まち並みをゆっくりと巡った後には日もだんだんと傾きかけていました。

お腹もすいてきたので、日本海の海の幸を堪能するのにお寿司を食べよう!と回転ずし店へ。

分厚くて新鮮なネタの乗ったお寿司は本格的な味わいで、家族みんな大満足の美味しさでした。

また食べに行きたいです。

志摩

石川県金沢市東山一丁目13-21

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金沢21世紀美術館でアートに触れる

金沢旅行2日目は、以前からずっと行ってみたかった「金沢21世紀美術館」を訪れました。

ホテルの朝食をゆっくりたっぷり食べた後だったので、散歩がてら歩いて美術館へ。

金沢のまちは坂道が思いのほか多いことも歩いてみて印象的でした。

兼六園のそばにはレンタルの電動自転車がたくさん停めてあったのを見て、確かに電動でないと、まち散策は難しそうだなと思いました。

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加賀城跡や兼六園のある辺りは周囲と比べて小高い丘になっていて、ゆるやかな坂道を登り切ったところにあります。

その城跡のすぐそばに美術館はありました。

外に展示してあるアート作品を見つけると、とたんに走り出す子どもたち。

まだ開館時間の少し前だったので、子どもと一緒に外の展示を見て回りました。

特に気に入っていたのが、下の写真のアート(写真は美術館より提供頂きました)。

ラッパのようなものが地面からニョキニョキ生えていて、中に向かって声を出すと、敷地内に点在しているどれか一つのラッパに声が届きます。

どこに繋がっているかを走って確かめに行ったり、たまたまそこに居合わせた知らない人と話をしたり。

面白くて不思議なアートに子どもも興味しんしんでした。

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フロリアン・クラール《アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3》2004
金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉修 写真提供:金沢21世紀美術館

愛称が「まるぴぃ」と付く通り、円形の美術館は周囲が芝生敷きの公園のような広場になっています。

円形の建物の周りを歩くと、向こう側が見通せないのが気になって他のアートも見つけようと、先へ先へと向かいたくなる楽しさがありました。

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金沢21世紀美術館 外観 撮影:渡邉修 提供:金沢21世紀美術館

地面とフラットな美術館の建物は、内と外のつながりが心地よい空間でした。

中の展示を見ていても、各展示室を出ると、中庭や廊下の先の外の景色が必ず目に入ります。

現代アートを見てその世界観に浸り、次の場所に行こうとすると、広がる空や外の芝生の景色を見ることで一旦感覚がリセットされます。

スイッチが切り替えられるような展示室の構成のおかげで、よりそれぞれの作品や展示が印象深く感じられました。

子どもたちは展示室を出るたびに外の様子が見えるので、早く外に出ようよー!

としきりに騒いでいましたが...。

子どもにとって中と外の距離感がそれだけ近くに感じられたということだと思います。

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金沢21世紀美術館 内観 撮影:渡邉修 提供:金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館と言えば、有名なプールの作品展示も上からだけですが見ることが出来ました。

地下から作品を見ている人がまるでプールの中に沈んでいるように見えます。

子どもも不思議な感覚になっていたのか、ここだけは興味深そうにじっくりと展示を眺めていました。

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レアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》2004
金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉修 写真提供:金沢21世紀美術館

空間構成そのものが美術品のような建物でアートに触れることができて、印象深い空間体験が出来ました。

その後は金沢ならではの金箔貼り体験をし、ちょうど紅葉をしていた兼六園の美しいお庭を眺めて金沢滞在を終え、次は電車で石川県の南西地域にある加賀市へ向かいました。

金沢21世紀美術館

石川県金沢市広坂1-2-1

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山代温泉の温泉宿へ

2日目の宿泊場所には山代温泉の温泉宿を選んでいました。

電車で加賀温泉駅を降り、宿の車に乗ること約10分ほどで到着。

2日目は兼六園のある周辺を朝からずっと歩いて散策していたので、歩き疲れた体を温泉でゆっくり休めることが出来ました。

温泉宿の楽しみと言えば、朝ごはん。

旅行の時はなぜあんなに朝ごはんが美味しいのでしょうか。

出かける時間になるまでゆっくりご飯を楽しみました。

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宿の入り口には温泉街ならではの足湯がありました。

足湯に浸かった後は体全体がぽかぽか温まりましたよ。

まだまだ温泉に入っていたかったのですが、電車の時間もあるので、宿を後に。

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旅の最後は甘いものも食べたいね、ということで、加賀温泉駅の近くにある地卵を使ったプリン屋さんへ。

一日限定5食という泡泡泡プリンを食べました。

カスタード風味の甘い泡があふれるくらいたっぷりのったプリン。

泡をすくいながら食べ進め、プリンは少し固めでしっかりした濃厚な味わい。

子どもも大人も美味しく頂きました。

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山代温泉 彩華の宿 多々見

石川県加賀市山代温泉桔梗丘3丁目41番地

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かがの湯ぷりん

石川県加賀市小菅波町1-55

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終わりに

金沢は八清も毎年参加している「町家の日」にもイベントが行われているなど、町家の残るまちとして知っていましたが、どんなまち並みなのか、京都とはどんな違いがあるのかを実際に見て感じる旅行になりました。

どちらも古いまち並みの残るまちではありますが、北陸ならではの風土や武家社会の影響を強く受けるなど歴史の中で生み出された建物は、京都とはまた違った趣がありました。

大型町家を利用したモダンなカフェに始まり、隅々まで保存された歴史あるまち並み、21世紀美術館の印象的な空間構成など、さまざまな空間の体験がコンパクトなエリアで短い滞在時間で出来ることは、京都にも通じるところがあります。

まだまだ見て回りたいところはたくさんあり、雪景色を見てみたいな、金沢おでんを食べたかったな、など、名残惜しくはありますが、とても楽しい旅行になりました。

行ってみたい場所に行く、という旅行の楽しみを改めて思い出した旅でした。

この研修を通して、他の地域の人が八清のサイトを見た時に、京都にも行ってみたい、住んでみたいと思ってもらえるコンテンツを作れるよう、何を魅力的に思ってもらえるかをこれからも考えて発信していきたいと思います。