はじめまして。プロパティマネジメント部に所属しております土堤内(どてうち)と申します。

横文字で難しそうな部署名ですが、簡単に申しますと賃貸物件を取り扱う部署です。

町家をはじめとした伝統構法の建物、築年数が経過したマンション等の活用相談を承り、賃貸物件として斡旋・紹介業務を行っています。

お手持ちの物件をどのように活用したらいいか分からないなど活用のお悩みがございましたら、ぜひ八清のプロパティマネジメント部までご相談下さい!

前置きが長くなりましたが、今回は10月に行われたベトナム社員研修のご紹介と現地で感じたことをレポートしたいと思います。

初めての社員研修

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八清では年に一回、社員研修として国内外を問わず、京都以外の建築や文化に触れる機会があります。

私事で恐縮ですが、今年2月に入社した私にとって初めての社員研修であり、初めての東南アジア渡航となりました。

行先はホーチミンシティです。

フランス統治時代の街並みと高層ビルが混在するベトナムの随一の経済都市で、東南アジア主要都市のひとつでもあります。

現地は雨期ということで湿度・気温は共に高く、日本の真夏に似た気候でした。

ようやく残暑から解放された体には少し堪える気候でしたが、スコールに打たれることも少なく天候に恵まれた研修となりました。

 

海外へ行った際、いつも意識させられることがあります。

それは気候と交通についてです。

気温差は当たり前のことですが、交通機関や道路の状況は、その国の特性を感じ取る要因のひとつだからです。

また肌で感じる気候や耳にする雑踏の音は普段のそれとは違い、海外に来たという実感を沸かせてくれます。

今回も空港から次の目的地へと移動するバスの車窓からこの街の暮らしや人々の様子を垣間見ることができました。

なんといってもバイクの数の多さが圧倒的でした。

そして、1台に乗車する人数の多さには衝撃を受けました。

ベトナムでもバイクの定員は2名だそうですが、子どもは定員に含まれないそうです。

2,3人乗りから最大5人乗りまでと日本ではありえない乗車人数でした。

また信号の数も少なく、歩行横断時には日本のようにしっかりと停まってくれないことがほとんどですので、この中を突き進んで行くという技を習得しなくてはなりませんでした。

ガイドさんの話では、ともかくゆっくり慌てず、変な動きをしないことがコツだそうです。

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見学先はユニークな幼稚園

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2日目はホーチミン中心街からバスで1時間ほど移動した郊外にある「Farming Kindergarten」という幼稚園の見学に伺いました。

この建物はベトナムの著名な建築家ヴォ・チョン・ギア氏の建築設計事務所ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツが設計した一風変わった建物の幼稚園です。

同氏は東京大学大学院で建築を学び、ベトナム帰国後にヴォ・チョン・ギア・アーキテクツを設立しました。

ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツは数々の賞を受賞し、ベトナムを拠点に国際的に活動する設計事務所だそうです。

幼稚園は10,650㎡の敷地に建つ延面積3,800㎡の鉄筋コンクリート2階建で約500人の子どもたちが通っています。

この幼稚園の施主はPouChen Vietnamという靴メーカーの工場で、工場に勤める労働者が職場近くに子供を預けられることで、安心して働けるようにと工場に隣接して建築されています。

養育費も低く抑えられ、日本の福利厚生制度のようでした。

そのため、施設自体の建設コストはかなり抑えて設計されているとのことでした。

地産地消を意識し、建材であるレンガやタイルは地元の材料が使われ、仕上げや設備も含め建設コストは1㎡あたり500ドルに抑えられているそうです。

企業によって違いはあると思いますが、経済が遅れているといった東南アジアに対する私の印象が変わりました。

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建物の間取りは上から見るとまるでプレッツェルのような形状で、中庭が3つ配置されています。

回廊に添わせて部屋が設けられ、ほとんどの部屋にノンステップでアクセスすることができ、お花や緑が溢れ風がとても気持ちの良い空間となっていました。

一見何の変哲もない中庭ですが、樹木の位置が不均等に配置されています。

これは風の循環を考えた設計で、涼しい空気が木々の多い庭にたまり、木々の少ない方へと抜けていくように計算されているそうです。

このため、苛酷な熱帯気候にもかかわらず、教室はエアコンなしで運営されています。

環境と省エネルギーに配慮され造りこまれていることが感じられました。

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また、屋上部分には子供たちが野菜を育てる畑があり、ベトナムの主産業である第一次産業の農業を幼少のころから教育しているとのことでした。

Farming Kindergarten とは日本語で「農業幼稚園」です。

ベトナムは農業国から製造業を基盤とした経済に移行している時期で、環境の変化や急速な都市化が著しくなり、ベトナムの子どもたちも自然と触れ合う機会が減りつつあります。

そんな子どもたちに、木々や緑の多い遊び場を提供し、また、野菜作りなど農業体験を通して自然環境とのつながりを学んでもらうことがこの幼稚園のコンセプトの一つであるそうです。


幼稚園といえば楽しく安全に過ごすことが大きな役割と考えていたため、この時期から農業を意識した体験をさせる教育プログラムが行われていることに驚きました。

普段食べているものがどうやって作られているか、どれだけの苦労があるかなど幼少の時期から食に関わる教育をする事は、第一次産業のGDPが低い日本にとっても意義のあることだと感じました。

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ホーチミンの街歩き

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幼稚園に引き続き、古いアパートメントをリノベーションした建物の見学をしました。

ベトナムでも日本と同じように築年数の経過したアパートメント、マンション、ビルなどをリノベーションするという活用方法が数多く見られます。

建物の特質上、狭い路地やマンションの奥に入らないとお店にたどり着けないため、迷路のような建物の内部へと侵入せねばなりません。

怪しい廊下を進む何とも言えないスリルがあり、突如おしゃれなバーやカフェが現れるワクワク感はまるで京都の町家のようでした。

狭い路地はどこからどこまでが共用部分なのか判別がつかず、進み続けると敷地内に入ってしまったのか、追い出されることもありましたが、方々廻るうちに共通の青い看板が掲げてある路地は、奥に店舗のある路地であることがわかってきました。

8.jpg※上部に写る大きな青い看板が目印

 

 

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自由時間に訪れたクラフトビール店もこうした路地奥にひっそりとあり、12種類の美味しいクラフトビールの飲み比べができ、東京やニューヨークにあってもおかしくないおしゃれな内装でした。

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2日目に社員全員で訪れたフレンチレストランも路地を入った場所にあり、フランス統治時代のアヘン工場跡をリノベーションした建物でした。路地の入口にある門は、当時のものがそのまま残されており、雰囲気のある素敵な佇まいでした。

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ホーチミンシティにはセブンイレブンなどコンビニをはじめ多くの日本企業が進出し、合同で地下鉄の大規模工事を行うなど開発が急速に進んでいます。

自国と同じお店がある安心感や流行のクラフトビールやチョコレートがどこでも食べられる利便性。

同時に、少しずつ世界が画一化されていくのではと感じました。

雑居ビルや古いアパートは衛生面での問題はあるかもしれませんが、独自性を感じさせてくれる存在でもあります。

きれいな建物ばかりで、個性を失った街並みになってしまうのは少し寂しく感じました。

また訪問する際には、街は大きく変化していると思います。少しでも多くのベトナム文化・街並みが残っていてほしいと願うばかりです。