PROJECT STORY-1
下鴨神社の糺の森から、街路樹の緑がまぶしい御影通を東へ、東へ。
白川通との大きな交差点「北白川別当」をさらに進むと、突き当りに「比叡山」への道のりを示す看板が見えてきます。
今回のプロジェクトは、古くより京都の町を見守り続けてきた霊峰、比叡山の中腹にある住宅街「比叡平」の一画に建つ家のお話。
京都から滋賀県大津市へ出る街道「志賀越道」、今は「山中越え」と呼ばる府道30号線を車で道なりに登ること、約15分。
住宅の中を走っていたはずの道は、いつの間にか緑に包まれた山の景色へと変わり、
沿道の気温計が表示する温度は、市内中心部より2~3度低め。
山頂付近には琵琶湖と京都市内を一望する比叡山ドライブウェイの入口があり
春は桜、夏は新緑、秋は雲海や紅葉、冬は雪景色などの美しい景色とともに
快適なドライブを堪能することができます。
すれ違うのは観光で訪れた車、幾人かの乗客を乗せた京都バスのほか、
京都と滋賀を結ぶ数少ない道路の1つであることから地元の人の利用も多い道。
滋賀県との県境を超え、延暦寺とガーデンミュージアムの看板が見えてきたらあと少しです。
比叡平は「比叡山ドライブウェイ」の入口近くに広がる、ゆったりとした大きな敷地に区画が特徴の閑静な住宅街。
1960年後半に高原別荘地として開発されたこともあり、一般的な住宅と混じって立派な山小屋風の住まいや
オープンカフェのような大きなデッキを張った住まい、三角屋根の家など、色々なデザインの住宅が建てられています。
京都市では、地域特性に合わせてデザイン基準を定める景観計画により古く美しい町並みが保たれていますが、
その反面、デザインや素材、色彩に関する取り決めが多く、洋風デザインの住まいを建てにくくなっていることも事実。
住まいの意匠やデザインにこだわって、京都から車で通勤圏内、京都市の景観計画の適用を受けない
滋賀県のこちらに移り住まれる方も多い、という話もうなずけます。
建物は築35年の2階建。
外から見るとまるで森のような濃い緑で囲われた約200坪の敷地は、その8割が庭になっていて、
四季を問わず咲き乱れる花々と自然の樹形が美しい雑木ガーデンが、訪れる人を優しく迎え入れてくれます。
建物の使い方やデザインを提案してくださったのは、今回はじめて一緒にお仕事をさせていただく木村松本設計事務所さん。
一度聞いたら忘れないお名前は、それぞれが建築家としてご活躍される木村さんと松本さんご夫妻が
藤子不二雄さんの例にならってつけられたそうなのですが、
そのお名前のように、自然体で新しい視点から、この家にぴったりの使い方をご提案してくださいました。