こんにちは。暮らし企画部プロデューサー&グローバル担当の尾藤です。

私の業務は、昨今増えてきた海外のお客様の対応が中心で、不動産売買や活用相談の業務を日々行っております。

八清では一番海外のお客様と接している立場であるからこそ、海外の方が京都をどう見ているのか、また、接客させていただく中で得た気付きなど、拙筆ながら記していこうと思います。

Uターンして驚かされた京都の変化

二寧坂s.jpg

さて。

ここ数年で、京都の街を歩いていて受ける印象はガラッと変わった気がします。

海外からの観光客が一気に増えましたよね。

私は生まれも育ちも京都でして、2005年に京都の大学を卒業してから、2015年に八清に入社するまで、海外生活も含めて10年京都を離れておりました。

久しぶりに住んでみた京都のこの変化にはただただ驚かされます。

自宅が左京区の観光地の目の前ということもあり、休日には外国人観光客を道案内しない日はありません。

 

この変化を定量的に裏付けるデータがあります。京都市が毎年行っている、「京都観光総合調査」です。

こちらの調査によれば、平成27年に京都市を訪れた観光客数は過去最高の5,684万人。

そのうち年間の外国人宿泊客数は、こちらも過去最高の316万人で、前年比約73%増という結果となっています。

この数字には、無許可で営業を行っている民泊施設等の数字は含まれていないとのことですので、実際にはさらに相当な数の外国人が京都に滞在していると言えます。

事実、私が普段、物件の内覧の対応をさせていただく海外のお客様の半数以上は、宿泊先がホテルではなく、Airbnb等の宿泊サイト経由で予約された施設を利用したと聞いています。


京都市年間観光客数.png

ものすごい変化ですよね。

こちらの調査内容の中で興味深いものとして、「外国人観光客が訪問した場所(複数回答)」があります。

ここで上位として挙がってくるものは、清水寺(65.0%)、金閣寺(53.7%)、二条城(49.9%)、祇園(49.1%)、伏見稲荷神社(41.4%)の順となっています。

いずれも、京都に来られた際には一度は見た方が良い定番の観光地ですし、八清に物件探しでお問い合わせをいただく際にもよく「清水寺の近くで町家を探している」「祇園もしくは祇園に近い場所で町家はないですか?」といった話はあります。

ちなみに、海外のお客様から八清に物件探しで問い合わせをいただく際に、エリアのリクエストで多いのは「哲学の道」「祇園」「嵐山」「清水寺周辺」がビッグ4です。(なかなかお客様の要望ど真ん中の物件を紹介できないことも多いですが...)。

訪問場所イラスト.png

Why Kyoto? ~印象的だった中国のお客様の言葉~

海外の方に人気の京都。しかし、京都の何が、海外の方をひきつけるのでしょうか。

歴史?文化?街並み?食べ物?アート?工芸品?

 

初めて対応させていただく海外のお客様に、私はいつも必ず尋ねる質問があります。

「なぜ京都なのですか?京都のどこに魅力を感じ、家を探されているのですか?」

そのときに、多くのお客様から共通して出てくるワードがあります。

「Peaceful」

日本語に訳すと、「平和、落ち着き、穏やか」といったところでしょうか。

 

とある中国のお客様との会話は印象的でした。

「京都に来ると、昔の中国を感じます。経済成長とともに、古い建物が取り壊されて高層ビルが立ち並ぶ国になってしまった中国にとって、京都はどこか懐かしく、気持ちが落ち着く街なのです。古い街並みや文化を守り続ける京都の動きは、新しいもの、物質的欲求を追求し続ける現代の中国人に対する警鐘と言え、私は町家を購入し、保全することで、知人にも古いものを残していく大切さを伝えていきたい。」

そもそも平安京は、中国は唐の長安をモデルに造営された都市であった史実に鑑みると、こうしてまた時代を超えて中国の方が京都からインスピレーションを受けている事実は、非常に光栄であり、喜ばしいことであると思います。

日本の多くのメディアが、マナー違反や「爆買い」などの側面を情報番組で特集し、一面的にしか中国人観光客のことを紹介しないのは残念ですが、こういった方々との素晴らしい出会いがこの仕事の楽しい部分であります。

海外のお客様といっても、ひとくくりではない。

さて、海外のお客様の不動産の購入についての話をいたします。

ひとえに海外のお客様と言っても、色んな方がおられます。

マーケティング戦略を構築する際、顧客属性のセグメンテーション(細分化)は初期段階でよく行われますが、京都との関わりの深さ、具体的には情報収集の積極性や来訪頻度を、「関与度(Involvement)」と表現するならば、京都に訪問する海外の方は関与度を軸に分類すると、下記の4つのクラスター(層)に分かれるのではないかと思います。

  • Tourist 旅行者 日本を観光する際に、京都もついでに観光で訪問する人。
  • Kyoto Lover 京都に来ることを目的として定期的(数年に1回)に観光に訪れる人。
  • Kyoto Enthusiast 京都が大好きで、毎年1回は必ず京都を訪れる人。
  • Kyotoite 「京都人」と呼べる程に、京都に通い暮らすように京都を楽しむ人。※kyotoite(英語で"キョウトアイト"と発音します。)

4分類.png

クラスターの違いは、探されている物件の違いにも表れています。

Touristと呼ばれる方は、利便性重視。市内中心部や地下鉄沿線を好みます。

Kyoto Loverは、著名な観光地に近いエリアで家を探します。

Kyoto Enthusiastは、自身のお気に入りのエリアが具体的にあり、そこで家を探します。

Kyotoiteは、自らが暮らし、コミュニティに溶け込んでいくという視点で、家を探します。

お客様がどのクラスターであるかを事前のメールのやり取りや会話から判断することを心がけるとともに、ご案内時には、京都をよりよく知っていただくために、色んな場所にお連れする時間をとることを惜しみません。

なぜなら、京都への理解・関与度が深くなればなるほど、物件選びの選択肢の幅が広がり、お客様に対してより良い提案ができるからです。

ミスマッチを防ぐ。目指すは地域コミュニティとの融合。

海外のお客様に販売する際に気を付けていることは、購入時のミスマッチ(のちの早期売却につながるような不本意な形での購入や、営利目的での安易な転売。)を防ぐという点です。

海外の方にとにかく販売することを優先することで、地域が崩壊したり、安易にディベロッパーに転売されて町家が滅失しては、意味がありません。

私たちのような、京都で生まれ京都に育てられてきた地元の不動産会社こそ、購入者・八清・コミュニティのすべてが善しとなる取引を目指す必要があります。

お客様のクラスターを分析し、最適な物件の提案、売買につなげる努力を行うとともに、京都の魅力を発信し続け、少しでも多くの「Kyotoite」と呼べる層を増やしていくことも同時にしていかなければなりません。

4月8日には、グローバルチームとしては初めての海外の方向けイベントも行いましたが、今後も色んな形で京都の魅力を発信していければと思います。