Vol.02 住まいと宿を兼ねる町家(東山区S様邸)・利活用ほか

今回訪問したのは、東山の観光地のど真ん中に位置するS様邸。
住居兼宿泊施設として、旅館業法の許認可取得を前提とした改修を行いました。お引き渡しから半年が経ち、宿のオープンに向けて着々と準備を進められているS様にお話しをお伺いしました。

住まいと宿を兼ねる町家

― このお家との出会いを教えてください

S様:当初は町家にこだわっていたわけではありませんでした。

子供が通う学校のこともあって京都で物件を探すことになりまして。
事情があって1週間で決めなければならない状況もあり、こちらのお家とはすごい巡りあわせだったと思っています。

一番初めこの物件を見たときは、まさか住めるようになるとは思えず、ハチセさんが改装されたものを色々見せてもらいましたが、この物件も本当に奇麗に直るなんてなかなか思えなくて。

改装している間も、できあがるまでどうなるか想像がつかなかったほどですから。
でも、なかなか物件の出ない場所であったことと、やはり何かピンとくるものがあってこのお家に決めました。

― 宿泊施設を兼ねているそうですね?

S様:ええ。実はここを購入するときは、宿泊施設にしようという計画は無くて。
営業担当の方とお話ししている中で、「この立地を活かして、お店や宿もできそうですね」という言葉がきっかけで、宿をやってみようと一念発起することになりました。

工務担当者:そうですね。旅館業法の許認可取得できるよう計画の段階でこまめに打ち合わせして、S様にも役所に出向いて頂いたり、と結構大変でしたよね。

旅館業法の認可を降ろそうと思うと、色々なしばりをクリアしながら改装をしていかなければならなくて。ハチセでもそのノウハウを持っていますが、物件ごと、地域ごとにクリアしなければならない問題は多く、僕たちも毎回苦労している部分ですね。

でも最終的にきちんと認可を降ろした状態でお引き渡しできて良かったです。

住まいと宿を兼ねる町家

S様:本当にこちらは知識が無いものですから・・・。話し合いながら徐々にイメージをつくっていくというところだったと思います。やはり専門的なところは専門分野の方にお任せして提案してもらいましたしね。本当に様々な提案をして頂いた中で、当初は間取りを大きく変更するような案も出してもらっていました。でも、私たちの根底には元あったものをなくしたくないという気持ちがあり、最終的にできる限り現状に近いものを選ぶことになりました。

工務担当者:そうですね。元の雰囲気が良かったので、僕の中でも既存の状態を活かす方向のイメージで提案をさせてもらってましたね。宿としての雰囲気にもぴったりですし正解だったと思いますよ!ところで宿の方の準備は進んでますか?

S様:じっくり準備をしたいと思って、一応この秋頃にオープンの予定です。

工務担当者:お知り合いの方とかは泊られてるのですよね?どのような反応をされてましたか?

S様:皆さんとても喜んでくれますよ!友人たちは、まさかこんな雰囲気の家だとは思っていないよらしく、みんな違うイメージを持って来るようで、玄関から驚いていましたね。

住まいと宿を兼ねる町家

S様:宿をするにあたって、私自身が地の人間じゃないので、案内とかは不備なことがあると思うのです。
だけど、 自分が開拓して良いと思うものを紹介していきたいなぁと思ってます。だから私も色々お店を研究していかないといけないんですよね(笑)
京都らしさを感じてもらえるような私なりのもてなしをしていきたい。コーヒーカップも自分で作ろうかと思っていたり、床の間のお花も自分で活けてみたり・・・と。

工務担当者:確かにご自身が体験されたことを伝えられるのは良いことですね。

S様:実際に客室となるこの和室で私も過ごしてみて、すごく落ち着きますし、自分でもとても気に入ってますからね。

住まいと宿を兼ねる町家

- 半年暮されてみていかがですか?

S様:これまでに数度引越しを経験しているのですが、これまでは落ち着くまでに3ヶ月~半年ぐらいはかかっていました。でもこのお家は不思議で、家族みんな入ってすぐの頃に「なんだか落ち着くね」と話していたのを覚えています。
なんていうか、そわそわする感じがないね、と。 柱など元からあったものを使ってるので、新しすぎない感じがよいのでしょうかね??

でもさすがに、寒さにはこたえましたよ。本当にこの寒さにはびっくりしました!我が家では寒さ対策でエアコンを入れてますが、暖房が冷風になっちゃいます(笑)
特にダイニングは吹き抜けにしていますからしょうがないのですけど。なので灯油ストーブも併用しています。

工務担当者:やはりそうなんですねぇ・・・。こちらの吹き抜けは私が施工してきた町家の中でも標準より高いぐらいですし、余計寒いかもしれませんね。

S様:私も家族もこのお家をとても楽しんでいますよ。
このお家は床の間はもちろん、玄関や廊下など、色々とインテリアにこだわれる空間があって。自分でもお花を習って、この家に活かしたい、ということも考えています。

前々から集めていた骨董を飾ってもこの雰囲気にしっくり馴染んでくれてとてもうれしいですね。お宿のこともありますが、多くの人に見てもらいたくなるお家ですね。

住まいと宿を兼ねる町家

- ご近所さんとのお付き合いはいかがですか?

S様:みなさん親切な方ばかりですよ。
なんと先日、組長になることが決まってしまいました(苦笑)
でもわからないことばっかりなんで、色々聞いてばかりです。

工務担当者:でも、早いうちに経験される方が良いと思いますよ!
これからお付き合いしていくわけですし、みなさんにも顔を覚えてもらえますしね。

S様:本当にそうですね。早いうちにやれてよかったと思います!
実はここに来る前は、漠然と京都には冷たいイメージを持ってて、その点はちょっと抵抗があったんです。でも、ちょっとしたことを聞いてもみなさん知らん顔されませんし、親切でとても温かいですよ。

工務担当者:確かに一般的に他府県の人たちからは冷たいというイメージをもたれてることは否めませんね(苦笑)
でも自然体で楽しんでなじまれているご様子、僕たちもとてもうれしくなります!

・・・お話しを伺って(担当H)・・・

住まいと宿を兼ねる町家

宿を経営していくことに対して気負わず、自分なりのおもてなしを模索されているS様の姿はとても楽しそうに感じられました。
ちょんとおすましして撮影に応じてくれた看板犬ぷーみーくんにも感謝です!

DATA

所 在
京都市東山区
家族構成
5人
間取構成
2DK・お庭 (宿兼住居、住み替えで町家を購入。設計・仕様決めに参加されました。)
特 徴
道路の突き当たりだが間口のある町家。宿泊施設兼住居として改装。宿の営業については旅館業法の認可を取得済み。

S様、ご協力ありがとうございました!