ビル部レポートでも問題がいっぱい。そうだ!検査済証をとろう。
【L型ビル記#3】

このビルの問題「検査済証」の話

前回のレポートで複合的な使い方に可能性を感じた下京区のビル。今回は具体的な方向性に踏み込んでみると、魅力と同時に意外な課題も見えてきました。

実はこの建物、建築確認申請は提出されているものの、検査済証が交付されていません。本来、建物は以下の流れで建設されます。

  • 1. 当時の建築基準法を基準に設計が行われ、建築確認済証が交付された後に工事を開始

  • 2. 工事完了後、建築確認済証の内容どおりに施工されているかを確認する完了検査を受け、問題がなければ検査済証が交付される

つまり「検査済証」とは、耐震性や防火性などの観点から、建物が法律どおり安全に完成していることを示す証明書です。

原則として、検査済証がない建物は法律に適合していない可能性があり、適法な使用ができません。

「なぜ検査済証のない建物が存在するのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、実は建築基準法遵守の意識が現在ほど高くなかった時代(おおよそ2000年前後まで)に建設された建物が、日本には数多く存在しています。

写真_京都の街並み

当時は、検査済証がなくても登記や融資を受けることができ、完了検査を受けないことに対する行政指導もほとんどなかったと言われています。

2000年頃には、建物の約半数が検査済証を取得していなかった時期もあったそうです。私が建築の仕事に就いてからは当たり前だと思っていたことが、実は行われていなかった——

今振り返ると、少し恐ろしい時代だったとも感じます。

では、検査済証のない建物は「壊して建て替える」しかないのか。

答えは NO。

検査済証は、条件を整えれば「再取得」することが可能です。

私たちは、この建物の検査済証を再取得するため、プロジェクトをスタートさせました。

イメージ_検査済証を取るぞ!

耐震性の問題

本物件には耐震性の課題があり、耐震補強工事を行います。

詳細な構造の話は割愛しますが、耐震改修促進法に基づいた改修計画です。

既存の主要構造(現行耐震基準を満たしていないメインフレーム)を活かしながら補強する方法は、小学校などで見かける鉄骨ブレースが後から追加されている建物をイメージしていただくと分かりやすいかと思います。

また、融資の観点では、建物の物理的な耐用年数が評価対象となります。

耐震改修促進法に則った耐震改修を行うことで、耐用年数が延び、改修前より建物評価額が上がると判断する金融機関も存在します。

イメージ_構造モデル
このビルの構造検討用に作成した構造モデル

やはり改修の方が安価

耐震補強に加え、その他の部分についても現行法規に適合させるための改修工事を行います。

コスト面を比較すると、

解体費+建て替え費用 > 改修費用

となり、改修の方が大幅にコストを抑えることが可能です。

さらに、都市に残る既存ストックを活用することは、環境負荷の低減(LCCO₂削減)にも寄与します。

イメージ_コストと環境負荷の低減

次回は、実際の工事内容についてご紹介します。

乞うご期待!

ライター:清水

八清の建築ブレーン的存在の建築ディレクター。鉄骨の経験豊富な一級建築士清水

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