弐 かいこう

 新たな物件を手にした落海は、さっそく企画を練り始めた。6年前に大正ロマンとして一軒目を手掛けた時、彼はまだ入社して半年ほどの新人だった。あれから置かれる立場、状況が変わり、当時のようにアツい想いで家を創っていくことが減ってしまい、少しばかり寂しさと物足りなさを覚えていたところだった。

 そんなところへ思わず巡ってきた、洋館の佇まいを併せ持つロマンの香り漂う建物。 かつて手掛けたロマンが頭の中を駆け巡り、思いが甦る。遠方まで視察に行き、情報を集め、大正時代の住宅を紐解くことに没頭したあの頃を。

「今こそ、大正ロマンを造りたい」

 まさに古き良き時代を思い起こすかのように、当時のメンバーでまた新しい「大正ロマン」を生み出すことができるのではないか? 胸の高鳴りが抑えられない落海は、メンバーへ召集をかけるべくメールの送信ボタンを力強く押した。