chapter07国土交通省の補助金を得ながら重ねた研究(後編)

都市居住推進研究会(以下「都住研」)では、国土交通省の以下のモデル事業の採択を受け、継続して「再建築不可の袋路において、子育て支援住環境を実現する」というテーマで取り組んできました。

  1. INDEX
  2. 2020年度 地域の空き家等の利活用等に関するモデル事業
  3. 2021年度 住宅市場を活用した空き家対策モデル事業
  4. 2022、2023年度~ 人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業 ※進行中

※それぞれの成果についての詳細は、都住研のサイトopen_in_new(外部リンク)で公表しています。2022、2023年度~については整い次第公表する予定です。以下に、各年の取組の概要を紹介します。

2020年度 
地域の空き家等の利活用等に関するモデル事業

これまでの取組から継続して、京都市内の路地(下京区中堂寺前田町)での子育て支援空間としての住宅供給の検討を進め、事業に着手することを目指しました。
大規模改修や再建築不可の路地奥を対象に、所有権を集約することで開発・流通が可能となる、まちづくりの文脈に沿った地域不動産ビジネスのモデルを示すことを目指しました。
さらに建設・不動産単独の事業ではなく、地域住民やNPO、行政、専門家と連携しながら地域課題の緩和を伴う土地利用の推進を図ることを目指しました。

出典:都市居住推進研究会

中堂寺袋路再生プロジェクトの推進

対象路地敷地の集約の進行

袋路での開発手段として、前年度に2方向の避難経路を確保し、安全性を高めた上で特例許可(43条2項2号許可)により進めることを確定しました。
さらに事業を円滑に進めるため、当該区画の敷地を集約させる、つまり購入による合筆で権利を一体化し、4戸の住宅を新築することとしました。
なお、計画の概要は下記の図の通りです。

  1. 対象6区画(これに隣接する相続人不明地を含む)の所有者との調整を進めました。
    全ての土地所有者と調整を進めており、購入の準備を進めました。
    なお、購入の条件として特例許可が下り、開発可能となることの特約付きで進めました。
  2. 隣接する相続人不明地は、裁判所により選任された財産管理人と調整を進め、入札の上購入する調整をしました。
  3. 上記区画に隣接する路地内の別の空き家を活用し、子育て支援サービス付帯型の賃貸住宅を整備するため検討・調整を進めました。
  4. 敷地内に存在する国有地(水路跡)の調整を進めました。
現状と計画について 出典:都市居住推進研究会
「子育て支援」サービス及び体制の検討

子育て支援環境及びサービスについて、識者及び実践者にヒアリングを行いました。内容は下記の通りです。

<子育ちを促進する住環境>

子育ち支援を実践している組織及びスタッフへのヒアリングから、小学校低学年のニーズが高いことが解りました。
つまり、高学年になると学校の授業時間が長くなったり、塾などの用事が増えていきますが、低学年は学校終了後の「居場所」「学ぶ場所」が必要という指摘がありました。

ヒアリングから得られたポイント
  1. 小学生は、低学年のニーズが高い。
  2. 利用料はフルに利用して月額3万円程度が負担感ないようだ。ただし立地する地域性にもよる。
  3. 学生など保育の分野で就業したい人は少なからずいる。
    そしてリアルな実習の場を望んでいる。
    そういうニーズとのマッチングも対象にする必要。
  4. 民間学童保育と子ども食堂などの貧困対策は分けて考えた方がよい。
  5. コロナ禍で親子関係は転機を迎えている。
    親世代の働き方が変わっていく中で、家族の暮らしも変わっていく。
    家族を大事にしようという気風がある(一方でDVの問題もある)。
  6. 子どもにとって気軽に外に出て、人とふれあえる機会と場が減少しているのが課題。
  7. シングルファザー・マザーの暮らしに気を配る必要性が高まっている。
  8. 子どもが育つ環境には、近所の目があるような「長屋文化」のような環境が必要。
    人と接する刺激が成長過程で必要。
  9. スタッフとして地域に住み込むにしても、プライバシーと自分の時間は欲しい。
提供する子育て支援サービスについて(検討案) 出典:都市居住推進研究会
事業予算の検討

当初はクラウドファンディング(投資型)を導入する予定でいましたが、京都市内で広く展開されている収益性の高い簡易宿所ではなく賃貸住宅を供給することで、アウトプットの事業採算性の不安が除去できないこと、また昨今の新型コロナウイルス感染拡大による投資マインドの冷え込みが想定できることから、投資者保護の観点から、今回の導入は見送りました。

今回は事業採算性を緻密に積み上げ、また市場家賃の逆算等事業性を確保する計画とすることで、事業者主体による事業としました。

路地の可能性をリアルタイムで追求・発信する「路地TV2021」の開催

本取組は、京都市総合企画局プロジェクト推進室が進める「西陣活性化プロジェクト」と連動させ、京都市及び事業受託者であるNPO法人アニュアルギャラリーと協働で、路地の多面的な魅力を発信する映像コンテンツ発信事業を実施しました。(2023年1月16日(土)10:00~17:00)

オンラインシステム(YouTube live)を使用し、4つのテーマに沿った「チャンネル」を設定、路地を生かしたまちづくりの可能性を検討・発信する場として実施しました。
生放送及び録画で番組を制作し、合計103番組を制作しました。
うち71コンテンツを都市居住推進研究会で制作しています。

これらのアーカイブを整理し、事後も情報発信を行っています。(参考open_in_new(外部リンク))

出典:都市居住推進研究会

路地の土地の寄付受けに関する検討

路地奥の空き家・空き地の多くは再建築不可であるため、それ単体では流通・活用が困難です。
事業性をもたせようとすれば、一定程度の集約化が望まれますが、それには相応の時間と手間を要します。
こうした課題を解決するには、行政等がランドバンク的に寄付の受け皿となることが有効と考えられますが、しかしながら行政が寄付受けすることに関しては、受け入れた土地等に係る維持管理コストの増大、所有者の管理責任放棄というモラルハザードや事業者による不要土地等の大量寄附の誘発などの問題が従来から指摘されてきました。
行政が土地や建物の寄附受けを躊躇する理由として、下記の項目があげられます。

  1. 維持管理費
  2. 使途の制限(公益に資するもの。住宅建設は不可)
  3. 土地の権利の整理(必ずしも相続登記がされているとは限らない)
  4. 相続人との調整

上記課題から、寄附受けを可能とするためには、下記の方向性で寄附受け後の土地利用を行うことが必要といえます。

  1. 公益性の確保
  2. 受け取り(運営)先の確定
  3. 行政コストがかからない(固定資産税が入ればなおよい)

さらに、不動産所有者が寄附をする動機に繋がる内容も重要です。

  1. 活用できる見込みのない土地に固定資産税を払い続けることからの開放
  2. 空き家空き地に社会的関心が高まる中、その目線からの開放
  3. 境界画定のサポート
  4. 別途、何らかの特典
  5. 現住の場合は、公営住宅の優先入居など居住安定を図るもの

路地の土地の寄附受けについては、路地再生の不可欠の条件ではありませんが、土地の集約を進める上でインセンティブの一つにはなり得ます。
贈与税の関係から行政への寄附は負担が少ないといえますが、寄附の段階で再建築不可の土地である場合は、地価は低く抑えられる可能性が高いです。
「使用実績や目的がない不動産の固定資産税を垂れ流すより手放したい」という不動産に関しては、その他の主体への寄附も期待できるのではないかと考えられます。

2021年度 
住宅市場を活用した空き家対策モデル事業

2021年度の事業内容と成果は下記の通りです。

下京区中堂寺路地再生プロジェクトの進行

20数年前の火災により空き地化・空き家化が進んでいた袋路内の6区画の土地を集約し、長屋建て住宅4戸を供給する取組を進めています。
これら4戸の住宅は子育て世帯を主たる対象とし、住戸内、路地空間をその仕様で計画・デザインを進めました。

事業予算確定、土地の取得、国有地(水路)調整、近隣との調整及び協定・合意、特例許可申請を経て、設計・確認申請、工事、と進め、2022年度に完成・賃貸住宅等として供用することを目指しました。

また、特例許可の要件である「防災まちづくり整備計画」の策定及び地区内の住民の合意を得るための調整を進めました。

そして新しく供給する4戸に居住する子育て世帯が安心して快適に暮らせるための協定書「路地暮らしのしおり」を作成しました。

地域での説明会の様子 出典:都市居住推進研究会

袋路内及び周辺に子育て支援サービスを誘致もしくは既存団体との連携

袋路内にある空き家を活用し、子育て支援サービスの担い手の誘致と調整を進めました。
具体的な構想を構築する段階にまで至りましたが、本プロジェクトの調整(地域との協議)に時間を要し、サービスの担い手とのスケジュールと合わず断念することとしました。

計画の検討段階では子育て支援サービスを面的に広げることを目指し、近隣にサービスの担い手のリサーチを行い、その傾向等を分析しました。

近似する環境で子育て・子育ちサービスを提供している主体にヒアリングを行い、本プロジェクトのサービス検討の素材としました。

継続的に袋路内で同様な土地利用の更新を行うための仕組み・体制の検討と構築

これまでの検討内容をより精査し、実際に稼働させていくための調整及び準備を進めました。

検討及び調整のために、行政及び京都市景観・まちづくりセンターと意見交換を行い、さらに専門家へのヒアリングを行いました。

路地内の空き地や空き家を含んだ土地の集約を進めるために、土地の寄附受けやランドバンク的な取組の検討を深めました。

市内の他地区等での展開の可能性の検討

路地を生かしたまちづくりを展開する可能性をより広げて検討するための調査及びケーススタディを行いました。

中堂寺路地再生プロジェクトを含む下京区の街区に加え、上京区の聚楽学区を対象に調査及びケーススタディを行いました。

「路地をつなぐ」「路地を生かす」ことで避難経路の確保の他、その他のまちづくりの効果が見られるかの検証を行いました。

他のテーマでの路地再生プロジェクトの可能性の検討

2018年以降取り組んできた袋路再生のテーマは、その空間的特性を鑑みて「子育て支援」に絞り込んで検討してきました。
これに加え、集積することでより効果を発揮する可能性のあるテーマを検討し、それを実現するためのストーリーについて検討を行いました。

上記の検討のために、市内(上京区及び北区)を対象に、これらを検討するための事例を調査しました。

地形や市街地の形成時期と路地の形状(通り抜け/袋路)の関係に関する考察や他者の通行や利用を許容する設えに関する考察をおこない、所有者の意向やコーディネータ、賃借人の重要性を導きました。

子どもたちが集える広場の運営事例 出典:都市居住推進研究会
調査の様子 出典:都市居住推進研究会

2022年度~ 
人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業

2022年度からは、建築計画の確定、近隣の方との具体的な調整、そして工事に着工する取組を行っています。
「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」への応募内容は以下の通りです(部分抜粋)。

事業の課題設定

京都市内には約6,000本の袋路があり、これに面する住戸の空き家化や建物の老朽化が進んでいます。
袋路内は再建築不可の土地も多く、安全性の低下や都市防災上の課題となっています。
さらに狭小な敷地も多く、不動産市場で流通せず遊休地として放置されたままのところも少なくありません。

一方、袋路は都心部にあり利便性が高く、不動産評価が低いことから住居費負担が少ないアフォーダブルハウスとなる可能性があります。
さらに再建築不可であるが故に伝統的な住宅様式である京町家も多く、歴史的な景観を保持しているところも少なくありません。
表通りにはないポテンシャルを備えているとも言えます。

袋路はその空間特性上、車両や関係者以外の出入りを抑えることができ、子どもが安心して遊べる空間でもあります。
都住研では路地のハード・ソフト両面の特性に着目し「路地は子育てに向いている」として、その安全性確保や快適性を備える整備と事業化を研究してきました。
これらの実現は、地価の高騰により市外への流出が進む子育て中の若年層世帯向けの都心部の住まいを実現することが可能となることが期待できます。

本取組の対象地である京都市下京区中堂寺前田町は、京都市と連携しながら検討してきた対象地です。
2016年から研究を進め、特例許可による事業化を軸にその他の与条件を整理・調整しながら事業計画を構築しました。
2022年度は対象区画の土地を取得して土地の集約を図り建設を着工する予定です。

提案のポイント

本提案事業のポイント(課題の解決方策)
  1. 京都市都心部に数多く存在する袋路において、子育て世帯が安心して暮らせる住宅を整備する。
  2. 袋路内は京都市においては再建築不可の土地も多く、災害時の避難路確保や延焼しにくい住環境とすることで、建築基準法の制度である「特例許可」を活用して住宅整備を可能とする。
  3. 土地の集約により複数戸の住宅を供給することで、路地内の住戸向けの子育て支援のサービスを提供しやすくする。
  4. 植栽や駐輪空間など路地空間の環境整備を整えることで、路地を単なる通路ではなく魅力的な屋外空間とする。
「住宅整備」のポイント
  1. 住戸内と路地空間を一体的に使える工夫を行うことで、狭小な住宅でも屋外空間を取り込むことで快適に暮らせる工夫の余地を提供する。
  2. 畳の間など子育て世帯が暮らしやすい住空間・設備を備える。
  3. 親目線の「子育て」だけで無く、子どもの自立・成長を支える「子育ち」を促す住空間を目指す。
「技術検証内容」のポイント
  1. 特例許可を得るための下記の条件を満たすための取組の実施。
  2. 街区内に存在していた南北、東西方向の2本の通路(私道・共有)をつなぎ、二方向避難を可能にする。
  3. 上記通路を将来にわたって継続させるための協定の締結
  4. 新築する住宅と街区の安全性の確保
  5. 近隣の計画への理解
  6. ランドバンク等事業推進環境の検討
「住宅提供および普及内容」のポイント
  1. 都心部に数多く存在する路地の再生を通じた、子育て世帯の居住地の選択肢を増加させる。
  2. 路地内の空き地・空き家の所有者による遊休不動産活用の動機づくりに寄与する。
  3. 市内の不動産事業者の袋路を対象にした事業への参加意欲を高め、地域密着型の不動産事業を促進する。

技術の検証

実施項目 技術・システムの特徴と本提案事業への活用の効果(作業仮説) 技術検証したい内容 技術検証のための調査方法
①二方向避難路の確保 特例許可を得るために、袋路内の計画区域住戸およびその他の住戸の避難安全性を確保する二方向避難を確保する。 災害時の二方向避難通路を確保する住戸配置及び通路の仕様検討 本件は特例許可のために必須の条件である。現在特例許可に向けて事前相談を重ねており、建築計画において概ね確定している。下記②~⑤の作業と並行して、通路の幅員や仕様、維持管理に関する詳細を検証していく。
②通路所有者の協定締結 上記で確保した二方向避難可能な通路を将来にわたって永続させるための所有者による協定を締結する。 緊急避難経路の整備及び維持管理に関する協定の締結 本件は特例許可のために必須の条件である。協定案を作成しており、当事者と調整を重ねながら、合意できる内容を構築していく。
③住宅と街区の安全性確保 新設する住宅において、火災時や地震時の安全性を確保するため、住宅の防火性能および設備内容の検討・装備を行う。 路地内住戸を建設する際に求められる準耐火建築物の仕様検討 本件は特例許可のために必須の条件である。建築計画において概ねの内容は確定しており、防災性を高めるための仕様及び設備を事業計画及び事業費用と照らし合わせながら確定していく。
④近隣の理解 上記①②においては通路に面した既存住戸の計画に対しての理解が不可欠である。加えて、子育て世帯が暮らしやすい住環境を実現するには、計画に対する近隣の理解が必要。 近隣の理解を得るための情報提供と調整のプロセスについて 子育て世帯が安心して暮らせるために、近隣の理解と受容は欠かせない。現状では路地奥の環境が変わることに対する抵抗、子育て世帯に対する不寛容さが見られる中、計画に対しての理解を得られるためのプロセスと情報を整理する。これらは同種の計画を広げるためにも欠かせないものといえる。
⑤ランドバンク等事業推進環境の検討 路地奥の狭小な土地を集約し事業推進環境を整える条件を整理する。 自治体等への寄附や購入の動機や体制の検討 本事業は時差なく全ての区画において事業時期に合わせて購入できたが、通常は時差を生じながら土地を集約していくこととなる。その時差を埋めるため一定期間土地を保有するランドバンク的な制度と仕組みを事例を参考にしながら構築する。

創意工夫点

再建築不可の路地奥に住宅を新築する

全国で課題となっている再建築不可の密集市街地において、狭小敷地を集約、安全性の確保、特例許可による新築、テーマ設定による都市の課題解決、の4つのコンセプトで事業計画を作成します。
既存の住環境を大きく改変することなく、地域が形成された歴史的文脈を引き継ぎながら居住環境の向上を目指します。

都心部の利便性の高い場所に子育て支援世帯が暮らしやすい住環境を整備する

京都市内都心部は、一部の地域を除き第二次大戦の被害をほとんど受けておらず、戦前や近世期の町割りを継承している地域が少なくありません。
このため交通至便な立地に数多くの路地が継承されており、その多くが再建築不可のために住宅が更新されず老朽化が進み、若年層世帯向けの住宅の選択肢には入りづらい状況です。
建物の更新を可能とすることで、不動産価値が表通りより低く抑えられていることによるアフォーダブル住宅を供給できる可能性が高まります。

所有者・相続人不明地の存在や整理されぬ官地の存在を含んだ路地奥での事業

路地奥は土地の権利が整理される機会が少ないことにより、官地等が残存することがあります。
また相続後の登記がされない不動産など所有者・相続人不明の不動産も少なくありません。
これらについて、土地を集約し事業化を図る道筋を付けます。

不動産の価値の向上に資する事業

再建築不可の土地を再建築可能とすることで利用の可能性が高まり、不動産価値を向上させることが期待できます。

建築・空間計画のモデル性・工夫点

路地と住戸内を一体的に利用できる空間構成

路地と住戸を一体的な生活空間として整備するため、路地と住戸の緩やかな繋がりを建築的工夫によって生み出します。
具体的には、住戸から路地に向かって1m以上の深い庇を設置し、路地と住戸の緩衝空間となる庇下空間を設けます。
住戸の玄関扉には大きな引分戸を設置しており、扉の開放時には住戸内と路地とが一体的な空間に感じられるようにしています。
各住戸が路地へと開かれることで、生活空間としての路地の利用、及び、路地に面した住戸間の交流を促進することが期待されます。

子育て世帯の生活に配慮した住空間

路地と住戸を子育て世帯の生活に配慮した住空間として計画しています。
路地は各住戸からつながった空間となることで、子供の遊び場として利用され、各住戸の住人がともに子育てに取り組むことが期待されます。
一部住戸の1階には土間、2階には畳間といった子育て世帯が利用しやすい住空間を設けています。

フレキシビリティ

将来的に住戸毎の建て替えに柔軟に対応できるよう住戸間の戸境壁は二重にしており、住戸間の防音効果にも寄与できます。

本事業を通じた事業効果

京都市内の中心市街地に多数存在する再建築不可の路地奥の遊休地を対象に、子育て世帯が安心して暮らせる住環境を整備できます。
建物の更新を通じて、街区内や周囲の防災性を高めることができます。
都心部の交通至便な場所に整備できることで、通勤等就労環境を犠牲にすることのない居住地を選択肢に加えることができます。
とりわけ京都市内は近年の地価の上昇により賃料の上昇やマンションの新築が抑制されるなどにより若年世帯の市外流出が顕著となり、都市の活力の低下が危惧されるなど都市課題として認識されており、これらの緩和を期待することができます。

路地内の敷地は、表通りと比較して土地取得費用を抑えることが可能であり、建設費用を抑えることでアフォーダブル住宅として供給できる可能性があります。
さらに路地空間を整備・工夫することで、都心部に立地しながらも子育て世帯にとって安全で使いやすい屋外空間を整備することができます。

都市居住推進研究会 事務局/京都光華女子大学 准教授/スーク創生事務所代表大島 祥子

京都のまちづくりの縁の下を担いたいと日々研鑽しています。
一級建築士/技術士(建設部門)/宅地建物取引士/博士(学術)