参 再会と
現状

 烏丸通の街路樹が鮮やかな緑を帯びる頃、落海の呼びかけに呼応したメンバーが現場で一堂に会した。全員が顔を揃えることは何年振りだろうか。ロマンの響きのもとに集まった彼らの顔には、どこか嬉しさが込み上げている。挨拶もそこそこに、みな期待を込めた眼差しで建物に目を向ける。
「この塀は変わってますね。タイルが埋め込まれているし、この虫籠のような部分も。」建築家としての探究心をくすぐられた江見は細部まで見入っている。 「…中は相当酷いものですよ。」と落海が皆を中へと促す。

 歪んで滑りにくくなった玄関の引き戸を開けると、そこには積もった埃と湿気が混ざった特有の臭いが漂っていた。雨漏りの跡、腐ってブカブカと浮き沈みする畳の感触、剥がれ落ちた壁が年月の経過を物語っていた。
 みなが目を引かれていた洋館の内部はというと、素朴な三帖ほどの畳敷きになっていた。しかし、畳とその下の梁の腐食が進んでいるらしく、立ち入ることすら危うかった。
「外と中のギャップがまさにロマンですね。大正から昭和初期ぐらいの雰囲気かな。」と江見。ストライプ状の型板ガラスの窓、レトロな形の鍵やスイッチ。年季も入ってどこか懐かしい。
「この空間をどう料理するか…肝になりますね。」藤井がつぶやいた。
一様に期待に胸を膨らませ一同は現地を後にした。