壱 はじまり

2017年の春。営業部リーダーである安田の手元にやってきた、とある古びた建物の情報から物語ははじまる。

「落海君、直にこの物件を仕入れることになるから、担当よろしくたのむよ。」
安田からA4サイズの用紙を数枚手渡された落海は、目にした瞬間衝撃が走った。
「安田さん、これは・・・!」
落海の反応を伺いながら、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる安田。
「おもしろそうな物件だろ?」
手元の用紙に写っていたのは、厚みのある頑丈そうな塀に覆われたファサード(外観)。
 そして何より目を奪われたのは、前にせり出している洋館のような趣き。 瞬時に落海の頭の中はいっぱいになった。

「やるしかない・・・!大正ロマンを!」