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大正ロマン 第二話

かつて日本随一の花街として名を馳せた「島原」。
ここに、大正の趣を感じさせる素晴らしい建物があります。

「きんせ旅館」さんはその昔、島原の揚屋、
のちに旅館として営業された、美しく貴重な建造物。
今回ご縁あってお邪魔させていただくことになりました。

築250年以上の歴史を誇る建物は、
今から約20年前、旅館としての役割を終え、
その華やかな歴史に一度幕を閉じました。

その後ひっそりとご家族の手によって守られてきたこの建物を、
2009年、この家を生家とする現オーナー様が
カフェバーとして受け継がれ、さらに今年5月、
宿泊施設としても再び歩み始められました。

この貴重な建物を知る多くの人々が
きんせ旅館さんの新しいスタートを喜び、
その魅力ある建物とオーナー様の柔らかな人柄が
更なるファンを増やし続けています。

大正ロマン打ち合わせ写真2 大正ロマン打ち合わせ写真3
訪れる人を魅了する美しいステンドグラスの数々
大正ロマン打ち合わせ写真4

外観は、堂々とした風格と繊細さを併せ持つ町家。
これほど素晴らしく、そして大きな建物が街並みに馴染む姿は、
島原という町の歴史のなせるわざのようにも思えます。

一歩足を踏み入れると、そこは別世界。
タイムスリップというよりは、
まるで違う時間がながれている、夢の世界のようです。

大正後期に改装されたというダンスホール、およびラウンジは
折り上げ格天井(ごうてんじょう)とステンドグラスに囲まれ、
当時の艶やかで濃密な雰囲気を感じさせます。

そこで感じたのは、和でもなく、洋でもなく、まさに大正風でもない
この建物だけが身にまとう雰囲気。

建物に積み重ねられた歴史と、記憶。
そこに見え隠れする人間模様が、建物に深さと魅力を与えます。

大正ロマン打ち合わせ写真5大正ロマン打ち合わせ写真6
大正ロマン打ち合わせ写真7 大正ロマン打ち合わせ写真8

私たちの役目は、新たにデザインすることではなく
その家の良さを生かし、魅力を引き立てること。

素材を上から塗りつぶしてしまうのでは、本末転倒です。

今回は、大正風のデザインで上塗りするのではなく、
和の佇まい、この家そのものの良さを残しながら、
少しだけ消しゴムで消して、書き足す、
そんな役割を肌で感じる打ち合わせとなりました。

本物の迫力、重厚感を感じる空間の中で
珈琲の香りの向こうにぼんやりと見える天井を眺めながら、
(深みのあるあの家に合わせて)
天井は重厚感のあるものにしたいですね、
と話すメンバー。

それぞれの「大正ロマン」を感じながら、
私たちも着工に向けて歩みを進めます。