Vol.11 もくもくの家

東山区の町家の残る界わいにある「もくもくの家」。

家の表の間では、奥様が小さなセレクトショップを営まれており、間取を生かした店内や生活されているリビングからは、この家を愛おしんでお住まいされている様子が伝わってきます。営業時間の前にお邪魔して、ご主人様と奥様にお話を伺いました。

Vol.11 もくもくの家

物件担当者 H:早速ですが、お住まいになっていかがですか?

奥様:東山区のこの辺りは住んでみると面白い発見が多いです。
近所に「暮らしの手帖」で取材されていた子供の本専門店の店長さんが住まわれていたり、近くの洋裁カフェ「芝洋」さんも時々イベントをされているので遊びに行ったりしています。先日もおすそわけを頂きました。

ご主人:この家について近所の人に聞くと、以前住まれていた方は表の間で整体のお店をされていたそう。 路地に入る所に美容室があったり、他にもぱっと見て入れるお店は少なく見えるけど、よく聞いてみるとお商売をされている家が多い。

この家は元からあった空間を生かされているということですが、整体のお店をされていた話からも、家自体が外に向けて開かれた空間だということが伺える作りですよね。

奥様:こんな風にお店をしていると、オープンしたての頃は近所の色々な人がやってきて
「こんな所で服のお店をしても流行らないんじゃないの?」
と心配して下さったり、
「火鉢を置いたら似合う空間だし、骨董市で火鉢を買ってきたら?」
と言って骨董市の日程を教えて下さったり。
「カフェにすると良いかもしれないですよ。」
というアドバイスを下さったり。皆さん色々気にかけて下さっているようです。

物件担当者 H:この辺りは町家が多く残っていて、昔から住んでおられる方も多い地域ですしね。

奥様:そうですね。そういえば以前、東山のこの地域で物件を探している時に通った道があるんですが、ゆるやかな坂に町家が連なって建っている場所があったんです。
とても良い雰囲気だったんですが、その後その場所を訪れてみると、その並びの一軒が取り壊されてしまって、ちょうど歯抜けのようになってしまっていて・・・なんてもったいないんだろう、と思ったことがありました。

物件担当者 H:町家は年に数パーセントずつ減少していっています。
京都市内で新築を建てたい場合、土地だけで売っていることってとても少ない。たいがい建築条件付きという形で、その工務店さんを通して建てないといけなかったりする。
条件無しの土地を求めている人にとっては、町家は建物を取り壊して更地にすれば使える土地と思われるので、そういった方が買って、何か新しいものを建てるのかもしれませんね。

◆ ◆ ◆

物件担当者 H:この家の空間を生かしてお店を作られていることをとても嬉しく思うのですが、店舗にするにあたってはいかがでしたか?

奥様:お店にする時に、表の畳の間を無くして、土間の部分を広げようか、という話も出ていたんですが、この家の形を残していくことを決めたのは、ふすま紙を「唐長」さんに見に行ってからでした。

物件担当者 H:お店の二帖の畳の間にあったふすま紙ですよね。あれは「唐長」さんのふすま紙なんですね。ハチセのお客様にも時々使われる方が居られます。

ご主人:ふすま紙は、「唐長サルヤマサロン」でオーダーしたものです。唐紙師のトトさんから色々な組み合わせを提案され、自分からも組み合わせを言ったりして創ってもらいました。

奥様:そうなんです。トトさんに色々とお話をさせて頂きました。興味深いお話も聞けて、とても素敵な方で。そんな風にして作って頂いたからか、出来あがったものをみるととても良いものが出来ていて。

ご主人:正倉院文様というんですか。シルクロードから伝わった、奈良の正倉院の宝物に使われている文様です。その中で、鳥と草花がモチーフにされている、この文様にしていただきました。 けっこう大胆な提案をしていたのですが、それを受け入れて頂いて、素敵なふすま紙になりました。

奥様:引き手も素敵なものなので、この唐紙にしてから、ふすまの開け閉めを丁寧にするようになりましたね(笑) このふすまなら、畳の間をこのまま残したいね、ということになったんです。

この唐紙が作られた際のエピソードについては、唐長 サルヤマサロン 唐紙師のトトアキヒコさんの ブログにもご紹介されています。

◇唐紙について・・・「こだわり」(外部リンク)

◇唐紙師トトアキヒコさんのブログ・・・ KIRA KARACHO/唐長の奏でる唐紙の音(外部リンク)

Vol.11 もくもくの家

ご主人:はじめに置いて頂いていたそうげんフローリストさんの植栽も、雰囲気が良いですよね。 町家はどちらかと言えば「和」のイメージ。 それを良い意味で「洋」なイメージにしてくれている。ファサードに使われているフェンスとか、植栽の植木鉢とか。

物件担当者 H:改装の際には、そうげんさんに実際に現地を確認して頂いて、その場所ごとに植栽を提案して頂きました。

ご主人:自分たちの作るお店にも、使い捨てではなくて、長く使われる洋服や雑貨を置きたい。と考えていて。 和や洋という決まったイメージよりも、色々な場所のもので長く愛されるようなものを置きたい、と思っているので、この町家の雰囲気が良い意味で馴染んでいるのではないかと思っています。

奥様:2階のファサードの窓枠が緑に塗られているのも、主人が気に入っているんです。 夏の間はスダレをかけていたんですが、スダレをかけると窓枠が見えなくなる。 もう日射しもそんなに強くなくなってくると、早く外そうということになって。

物件担当者 H:楽しんでお住まいされているようでなによりです。 この家はハチセの社内メンバーと一緒に改装を考えていったのですが、雑貨屋さんやカフェをしてもらえるようなイメージで作っていたので、Yさんのような方に住んで頂けたのは、とても幸せなことだと思っています。

ご主人:ついこの間、町家に住まれて6年目と言う方のお話を聞く機会があったのですが、その方のお話だと、 「1年くらいは家に拒否されている感じがした。」と言われていました。 こちらも家に馴染むような生活をしないといけないし、家にも工夫を加えながら住んでいく必要があるのかな、とその時に思ったものです。 この家で居心地良い生活が出来るように時間をかけて暮らしていきたいと思います。

◇そうげんフローリストさんホームページ SOWGEN(外部リンク)

Vol.11 もくもくの家

まだまだ色々なお話を伺いたかったのですが、お話を聞いている間にお店の営業時間に。お店が開くとすぐにお客様が来店され、奥様がにこやかに対応されていました。

お店という形で地域やその店を訪れる人とのつながりを持ち、暮らしと人との関わりを大事にされて、この家にお住まいされている印象のY様ご夫妻。愛着を持ってこの家に暮らされている様子からは、リノベーションによって新しい住まい手に引き継がれた家を、より良い形で大切にお住まい頂けるような気がして、とても嬉しくなりました。

Y様ご夫妻の営まれているお店は建仁寺や六波羅密寺のあるすぐ近くになります。京都に来られた際にはお店に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

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DATA

所 在
京都市東山区
家族構成
ご夫婦+お子様
間取構成
5DK