はじめまして。プロパティマネジメント部の村田と申します。

先日公開しました土堤内の記事の冒頭にありますように、プロパティマネジメント部では賃貸物件を主に取り扱っていまして、「京町家に住んでみたい!」「雰囲気を活かして事業を行いたい!」と考えられているお客様の相談や内覧、契約等のお手伝いをさせていただいています。

またシェアハウス等の物件管理を行ったり、物件の活用のご相談にも対応しております。

こういった業務では、様々な形でお客様と接する機会があるのですが、それらを通して最近京町家に対して思うこと考える事を書かせていただきたいと思います。

プロパティマネジメント部の役割

プロパティマネジメント部には主に3つのお仕事があります。

1.賃貸物件のご紹介、ご案内等

お住まいを探されているお客様の希望地域や賃料などの基本的な条件をはじめ、どのような暮らしを考えているかなど、ゆっくりお話を伺いながら物件のご紹介やご案内をしています。

京町家では、新築にはなかなか出すことのできない経年美が見て取れたり、自然と共生しながら四季を感じることが出来ます。しかし一方で、新築のマンションに比べれば快適ではない点が多いです。

例えば高気密高断熱ではないですし、虫やねずみがいることもあります。建具の建て付けが良くない場合も往々にしてあります。

そういった京町家の魅力的なところも、思わぬハプニングなどが起こり得ることも、包み隠さずお伝えさせてもらっています。

しかし裏を返せば、建物を住みこなすことを楽しいと思う方にとってはこれ以上ないと言えるほど、楽しい建物だと私は考えています。

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2.シェアハウスやコワーキングスペースの管理や運営

京町家を活用したシェアハウス(京だんらん)やコワーキングスペース(京創舎)の物件の管理・運営をしています。

入居のお手伝いで終わるのではなく、入居された後のサポートもさせていただいています。

例えば、シェアスペースの備品補充や修繕から、シェアハウス内のコミュニケーション活性化のためのイベント企画や仕組みづくりなどもしています。

入居者の方に快適に暮らしてもらえるように建物のハード面のみならずソフト面のサポートを行います。

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シェアハウスの住人で食事会 (八清のシェアハウス専用ページ

 

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コミュニケーションを重視するコワーキングスペース (コワーキング∞ラボ京創舎

 

 

3.活用相談

京町家等を所有されている方や相続で取得された方から、物件の活用方法についてご相談を受け、活用提案なども行っています。

物件を所有されている方々には様々な背景があるため、それに伴って相談内容も提案内容も様々です。

 

例えば、

「長期出張で東京に3年から5年程度住むこととなったから、賃貸に出したい。でもどのような条件で賃貸に出せばいいの?」

といった相談例。

 

ゆくゆくは戻られて住まいとしてお使いになるのですから、大きなリノベーションが必要となる飲食店やゲストハウス利用を避ける方向で提案し、居住用途をお勧めしています。

 

一方で、

「相続したものの、使用する予定もなければ管理する時間もない。そのまま住める状態でもなければ、水回り等が相当古いけど需要ってあるの?」

といったご相談もあります。

事業用途としても貸し出すことを可とし、改修も自由とすることで借りる方が出て来る可能性が高くなると考えられます。

 

 

◆居住用のリノベーション事例(売却済み)

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◆宿泊施設への活用例 (京宿家 有隣しらたけ庵) 

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中には、

「活用を前向きに考えているけれど、簡単には処分ができない先祖が残した家具や骨董品、着物、さらにはお仏壇や神棚まであるけど、貸すことは出来るの?」

といった、ご相談もお受けすることがございます。

 

賃貸に出す場合、基本的には貸主の所有物を残すことはおすすめしていません。

しかし、ただ「片付けておいてくださいね」ということではなく、私達はどのようにすることで賃貸に出し活用できるかを考え、提案をしています。

この場合、離れがある物件でしたので、離れに仏間等を設えて荷物等を収納できるように改修し、離れは賃貸借対象外にし、母屋のみを賃貸募集するという考え方をご説明させていただきました。

 

 

日々、上記の業務を行う中で、京町家や伝統的な家屋について思うこと・考えさせられることがいくつかあります。

 

「こんなにも素敵な雰囲気の家に、住むことが出来るんですね!」

「せっかく京都でお店をするなら、京都らしい雰囲気を味わってもらいたいんです!」

 

京町家等のご案内をした際に、お客様からこのような感想をいただくことがあります 。

特に他府県からお越しのお客さまにとっては、京町家など伝統的な建物を住まいやお店として使うことが、まだまだ珍しいようです。

こういった感想を聞きますと、京町家等の伝統的な家屋を展示品の様に扱うのではなく、住まいやお店など、本来の用途に近しい使い方をする方が望ましいと私は考えます。

そのほうが多くの方に気軽に触れてもらえるでしょうし、それによりもっと身近な存在になるのではと思います 。

 

 

京町家を残す取り組み

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昨今、京町家に住みたい、事業をしたいと考える方が多く、京町家の価値は上昇しています。

しかし一方で、活用相談時にオーナー様より「こんな古い家に価値なんてあるの?」「本当に使ってくれる人なんているの?」というお言葉をいただくことがあります。

日常の維持管理や改修費用、固定資産税や相続税等が大きな負担となる場合もありますし、大規模な物件であれば個人の方だけでは管理でさえ手に負えないケースもあり、やむなく建物を取り壊して手放されることもたびたびあります。

町家は現在の建築基準法の下では建てることが難しい伝統構法の建物ですので、一度潰せば同じものを建て直すことは容易ではありません。

しかし昨年、平成21年に47,000軒あったとされる京町家が、平成28年度の追跡調査でおよそ5,600軒が消失したという報告が市よりなされました。(京都市調査報告(外部サイト)

私たちがこのような京町家の希少価値や需要についてオーナー様にお伝えできなければ、潰して収益性の高いと考えられるアパートやマンション、ビルに建て替えてしまうこともありえます。

実際、そういった例は後を絶たず、町家は減少し続けています。

 

そんな中、昨年末に制定された、京町家を解体する際に京都市への届出が義務付けられる「京町家条例」が今年の5月より本格的にスタートします。

「京町家条例」では、重要京町家および重点取組地区に指定された京町家については、解体に着手する日の1年前までに届け出が義務付けられます。

つまり、解体までの1年間は、解体せずに残す道を模索する期間ということになります。

単純に期間を設けるだけではなく、京都市と不動産業者など事業者団体が連携し、相談体制を整え、活用方法の提案や、活用希望者とのマッチングなどが準備されています。

 

京都市京町家条例 (外部サイト)

 

 
土地・建物はあくまで個人の財産であり、如何様にしようとも個人の自由といえばそれまでです。

ただ、その決断を下す前に一度考え直すための意識付けを幅広い世代に出来たならば、有限である京町家を残し続けることが出来るのではないでしょうか。

私たちも一事業者として町家の流通を促し、一軒でも多く残せるように努めたいと思います。

 

「住む・使う」ということは保全すること

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京町家や伝統的な建物に住んだり、使用したりするには一般的な住宅以上に丁寧な維持管理が必要であり、古い建物ですから場合によってはより改修回数も増えるかもしれません。

建物は人が使ってこそ生きるものです。実際に住んだり使用したりするということが、は京町家という資産の保全につながります。

さらに点(保全)がいくつも繋がり線(町)となり、面(地域)となっていくことで、少し飛躍した表現になるかもしれませんが、京都の日本の資産や文化の継承に繋がるのではと私は考えています。

現在、京町家や伝統的な家屋にお住まいになっている方も、いま検討をされている方も、所有されている方もこのような考えを頭の片隅に置きながら生活してみたり、物件を探してみると、また違った視点で見ることができるのではないでしょうか。

今後も人が住む、使うというごく自然な営みの中で、京町家や伝統的な家屋を脈々と次の世代へと残すことの一旦を担っていきたいと思います。